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た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

借金時計

2005年10月12日 | Weblog
借金時計というものがネット上に存在している。
(http://www.takarabe-hrj.co.jp/takarabe/clock/index.htm)
よくわからんが恐ろしい速さで膨らんでいく日本の借金を眺めていると、
これで気が変にならない自分は不感症じゃないか、
ニュースでよく聞く気が触れた人のほうが案外まともなんじゃないかと
さして気分の悪くならない自分に気分を害したりして
とてもややこしい面持ちになる。
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屠殺

2005年10月12日 | 俳句
牛一頭 して知る この世かな
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食事の借景

2005年10月09日 | 写真とことば
食欲の秋である。
何を眺めがら食べると一番食欲が増すであろうか。
写真は川を眺めている。しかしガラス越しのせいか
味は今ひとつだった。

噴火する火口なんてどうだろうか。とても
エキサイティングな食事になりそうである。

男性なら女性の姿。女性なら男性の姿。
しかし目には楽しくても食欲が増すことには
ならない気がする。私は
女性と食事を共にすると食欲が出ない。
いろんなことが気になるせいであろう。

星空。やっぱり食欲とは関係のない
感情の部分が高まりそうである。

豚や鶏や牛。今食べているものの生前の姿。
論外である。ナイフとフォークを動かす
自分が浅ましく思えるだけである。

何を眺めると食事が美味しいのだろう。
友に相談したら、
お前が食べているものをちゃんと見て食え。
と叱られた。
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鳥と雲と夕暮れ

2005年10月08日 | 写真とことば
雲を写そうとしたら鳥が入ってきた。
鳥を写そうと狙っていたのではない。
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小雨《10月6日改訂版》(一杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 えー、お耳汚しな身上話ってところを一席。
 「雨の日は雨を楽しむ簾かな」ってな句をどなたさんかお作りなすったのを拝見したことがございますが、いい句でございますね、あの晩は珍しい小雨の晩でして、何しろ年中乾燥したこの街には小雨も慈雨と思えるわけでして、ひょいと時間のできたのを幸い、傘も差さずに街をぶらついたわけでございます。
 秋口でしたから、秋雨、といったところだったんでしょうなあ、しばらくひと気のない交差点でじっとたたずまないと、降ってる雨脚にも気づかないような、そんな気持ちのよい霧雨でございました。
 元来が私は、冒険てなもんにおくてな方でありまして、とくに金のかかる冒険には金をかけたくないという根っからの貧乏根性でありまして、スナックなんぞというお絞り突き出し付き一杯何千円という所にはもう、会社の金か取引先の金でない限り足を踏み入れたことがなかったんでございますが、ちょうどその晩、小雨の降る夜の街の橋のたもとで、私は見つけたんでございます。「小雨」という名の看板を上げたスナックを。(つづく)
 
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小雨(二杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 また景気の悪い名前をつけたもんだと思いながら、ちょうど小雨の降る晩ってこともありましたし、何やら心ひかれて、冒険嫌いの私が冒険心を起こして、店のドアを押したんでございます。へへ、私事で恐縮ですが、ちょうど女房と私のやりくりのことで大喧嘩して、まあ私の酒が過ぎるだの、月給を考えて飲めだの、あんまりうるさいんで私が灰皿を叩き割ってやったら女房のやつ、泣きながら離縁の話を持ち出しやがって、それで余計に頭に来て私から家を飛び出したと、まあ打ち明けちまえばそういう晩でしたんで、それも私を大胆にした遠因だったんでしょうなあ。へへ。性の悪い日にゃ性の悪いことが起こります。
 樫かなんかでできてんのか、やたら重い木造りのドアを押し開けますてぇと、中には四十代くらいの細面の綺麗なママさんが一人でいらっしゃいました。「小雨」さんです。ええ、「小雨」ってのはママさんの名前だったんでございますよ。(つづく)
 
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小雨(三杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 したたか飲みましたなああの晩は。金がないのにダルマ一本空けましたもんねえ。何しろママに味わいがあるんだ、でしゃばらず、かといって気がつかないわけじゃなくて、たとえば私の煙草が雨でしけっているのに気づいてですな、私がライターで火をつける前に、かるく煙草を遠火であぶってくれたほどですからねえ。
 「ママさん、ママさんの名前が小雨ってことはわかったけど、そりゃもちろん本名じゃないでしょう。違うかい?失礼ながら。ねえ、どうして小雨って名前をつけたんだい」
 私のそういう若気の至りの不躾な質問にですな、ママさんはバージニアスリムの煙を細く噴き出してから、困ったように微笑んで因縁を聞かせてくれました。
 あ、申し上げるのが遅れちまいましたが、ママさんは黒いシャツの胸元に見える、そう、ベージュ色のツィードってやつを着てました。ちょっと鬢のよじれた、二重まぶたの物憂げなママさんには、それが妙に似合ってたんでございます。(つづく)
                                                 
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小雨(四杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 「なんとなく陰気な名前でしょ」
 ママさんは慌てて首を横に振る私を、無視するように遠くを見つめて言葉を続けましたね。
 「でも、この名前にしないと、待ってることを忘れてしまう気がしてね。恐いんですよ」
 ほう、何を────というか誰を、と私は聞き返しました。たぶん男だろうな、とは見当がつきましたんでね。
 ママさんは静かな笑みを浮かべながら煙草を人差し指で叩いて、長い灰を落としました。
 「誰をって、そうねえ。何を待ってるってことに答えるなら、小雨の降る晩かなあ・・・」
 「へえ。じゃあ、まさに今晩じゃない」
 「正確に言えば、小雨の降るあの晩です」
 私は頬杖を突きました。実はちょっと寒気がしたんですが、まさか秋口にエアコン入れてくれも言えませんからねえ。さては雨に長く濡れすぎたか、と今更ながらその晩の徘徊を後悔しましたね、ちょっとだけ。
 「この話聞きたいですか?」
 ママさんは物憂げな目でじっと私を見つめました。物憂げな目で美人に見つめられたらですよ。もちろん、と答えるより他ないでしょうに。(つづく) 
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小雨(五杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 それなら、とママさんは新たな煙草を取り出しました。煙草を箱に軽く叩きながら四五分間もあったでしょうか、火を点けるまでずいぶん長かった気がしますねえ。
 「もう二十年も前のことになります」
 ようやくママさんが口を切りました。
 「この店の前に橋があるでしょう」
 ええ、と私は相槌を打ちました。
 「小さな橋ですが、私にとっては人生のすべてと言っていい橋なんです」
 私ゃ相槌も控えましたよ。
 「ちょうど今日みたいな小雨の落ちる晩でした。好きになった男がいて、私より四つも若い医大生だったんですけどねえ。酒場で偶然知り合ってから、三ヵ月後のその小雨の晩まで、ずいぶん・・・ごめんなさい、のろけのようですけど、ずいぶん逢瀬を重ねました。私にとって人生で一番濃い時間の流れる三ヶ月でした。
 「でも当時の私は、仕立て屋のミシン娘。生きる唯一の楽しみは月に一度きりの外で飲むお酒だってくらいですから、将来を保証された医大生と添えるわけはないんです。ふふ、あの当時冗談で思ったんですけど、同じ縫う仕事でも、針が違えば人生が違うくらいの開きになるんですよ。(つづく)
 
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小雨(六杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 「身も心も奪われた挙句、男に切られました。これから国家試験が控えてるだの、自分はこの先まだどうなるかわからないだの、いろいろ言い訳を並べ立てられて。それを聞かされたのがあの橋の上で、小雨の降る晩だったんです」
 ママさんは私に酒を注いでくれました。ダルマはとうに空になってたから、おごりですよ。私ゃヘネシーってな酒を、あの晩初めて飲みましたよ。それ以降一度も口にしてませんが。
 「男は気づいてたんですよ」
 ママさんは煙草の煙を吐いて続けました。「私のお腹に赤ちゃんができてるってことを。その話がしたくて私がその晩彼を呼んだんですが、さすが医大生ですよね。前から大体気づいていたんです。気づいてたはずです。だって私がその話を切り出す前に、別れ話を持ちかけたんですから。私に何一つ自分の話をさせてくれなかったんですから。
 「男はその橋に私を残して去っていきました。傘だけ残して。その傘は風が吹いてすぐに川面に飛ばされちゃいましたけど。赤ちゃんは」
 ママさんは押し黙りましたね、そこで。言葉を捜してる按配でした。
 「流産しました」
 その辺はママさんのほんとの事実かなあと疑いましたよ、私も。言葉を捜す表情からしてね。ま、よくわかんないですが。
 「すべてを失って、私はそれ以降の二十年間を生きてきました。あの橋で、すべてを失ったんですよ。すべてを。記憶だけは────失いたくても、失えなかったです」
 ママさんは表情を明るくしました。痛々しかったですけどね。
 「ごめんなさいね。暗い話をして。でもね、小雨が降ると、どうしてもあの晩を思い出して、ひょっとしてあの人が帰ってくるかしらと、馬鹿な望みを持ってしまうんですよ」(つづく)
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