た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

 , ・ ’~案山子(かかし)~・ ; ’

2007年04月26日 | 写真とことば
   案山子


 私は不自然でございます。
 下手な生き物よりも生き物らしく
 毅然として日を見送るのでございますが
 如何せん私には友が無く
 友を探しに出かける脚もございません。

 私は不自然でございます。
 「下手な」はこれわが毒舌で
 つまりは当てこすりでございますが
 如何せん誰にも相手にされず
 両腕ははい、顔を覆うことすらできません。

 私は不自然でございます。
 それでも恋をしたこともございます。
 相手は農家の末娘
 紫と白の詰草を十摘んで
 襟元にそっと差し込んでくれました。
 
 それから麦わら帽子を直し
 私を「さん」づけで呼びました。
 ああ、渾身の力で動けたなら!
 如何せん私には声も無く
 無愛想に山を見つめておりました。

 近年ますます不自然に
 かしぎながら生きております。
 まだもうしばらく案山子でおります。
 私の色褪せた胸元に
 朽ち果てたあの詰草が一欠けら。
 
コメント
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