イザベラ・L・バード(1831~1904)、イギリスの女流旅行作家
1887年4月に横浜から函館までの日本の内陸縦断記です。
江戸時代が終わり時代は明治に変わって10年目のことです。
横浜に上陸したイザベラは通訳一人を連れて日本の国内旅行に旅立った。
上巻は東北旅行で記事はhttp://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9c4b8150096cccbbba33fbc2711c3c2e
下巻は北海道旅行から、東京へ戻り大阪、神戸、伊勢旅行から離日までです。
北海道旅行ではアイヌたちのの中に率先して入っていった。
アイヌに対しては好意的な描写が多く、外観は日本人のきゃしゃな体つきじゃなく、がっちりした筋肉と体つきだと言っている。
顔も西洋人のような理知的な顔つきで、誠実さは日本人と同じよう。
日本人が持ち込んだ「酒」におぼれているのが唯一残念なところ。
酒を飲むために働くだけで、何一つ余剰品を造ろうとしない、、、。いわば日本人がアイヌをスポイルしたようだとまで言っている。
北海道はヒグマの存在が非常に大きく、アイヌの熊に対する狩猟は「落とし穴」や「仕掛け毒矢」だった。森の中にそんなものが仕掛けられていたら、部外者の旅人はたまったものでないだろう。それで、日本政府の力が北海道に及んできたときに、それらのアイヌの狩猟方法は禁止させられた。
考えても車ほどの大きさがあるヒグマに人が何人がかりで狩猟しようとしても、鉄砲でもない限りムリ~~~。
仕掛け毒矢は強力で、矢じりに塗りこめた毒は、大きなヒグマでさえものの5分足らずで殺傷するという。そんなものが森に仕掛けられていたら、本州から来た日本人など危険でおちおち森の中を歩けない。
おそらく、アイヌの習慣、生活様式を禁止され、酒におぼれさせられて堕落していったのだろう。
アイヌについては、「言語はとても単純である。文字、文献、歴史は何もなく、伝統はごくわずかあるばかりで、自分たちが追い出された地にはなんの痕跡も残していない」とかいてある。縄文式時代と同じ社会が、ついこの間まで北海道と東北の地にあったのだ。
西洋人の利害のないイザベラの記録なので、ある程度は事実だろう。
今から100数年前に、日本の地に文字がなかった文明があったことは驚きです。
今でもアイヌの実態がよく分かっていないのではないかな。
面白いのが、アイヌは義経をしたって祭っている。
日本を平定したのが源氏ならば、その先方に立っていたのが義経です。東北では義経の伝説が数多くあるが、北海道のアイヌの中に義経を強く慕う気持ちがあるのが興味深い。「なぜ鉄器を使わない」「日本人が来て、鉄器の技術を持って行ってしまった」「なぜ宗教を持たない」「日本人が来て歴史を消していった」など、意味深な表現もあった。
アイヌでは義経以降に来た日本人が、アイヌの伝説を何もかも盗んでいったと言っている。
アイヌは毛皮や織った布が主の生産物で、それを持って日本人の村へ行きお酒と交換していた。
それで酒におぼれる日常になったようだ。
イザベラ・バードはその後東京、大阪、兵庫とまわり最後に奈良を通って伊勢に参拝した。
伊勢はその当時もっとも立派な街のひとつであったと書いてある。
空虚な神道と定着した仏教と対比している。
最後のページで当時の日本の経済状態現況を箇条書きのように記している。
日本の新政府が真っ先に行った事業のひとつに、東京ー大阪間の郵便路線の確立だと。今で言う通信網に相当するだろう。
軍隊の兵隊さんは百姓や平民上がりで怠け者が多くで規律がだらしなかったと、、、それに反して警官の立派さは武士階級の人たちがなったからだろうと書いてあって、なるほどと思った。犯罪が世界の国に比べても極めて少ないのが特徴で、それは今に続くことです。教育に力を入れていて、軍備の約二倍の予算がついている。独裁国家のようなものだけど、軍事じゃなく教育に予算を割いていたのは賢明なことだった。
明治維新で新生日本を立ち上げた人々は、ただの荒くれものじゃなかった。
システムの破棄と再構築を緻密に力強く推進していって、きわめて短期間に列強に比するぐらいになった。
この現状報告が、とても興味深かった。
イザベラ・バードの日本紀行、上巻
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9c4b8150096cccbbba33fbc2711c3c2e
イザベラバードの中国奥地紀行㊤
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7c1d52aa204ccb6975824f020bdcc504
イザベラバードの中国奥地紀行㊦
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/96ac13d80f8fb7067ac229984ae53ce1
イザベラバードの朝鮮紀行
http://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f2f1b42636aa986b44cb7594e14d909
イザベラバードのハワイ紀行
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7ac626dd5a29152ba319ad10d16b2ec3
2021年5月 イザベラ・バードが阿賀野川流域を美しい日本と書いていたので、阿賀野川のあたりではイザベラバードが人気です。阿賀野川下りの小舟の船名にイザベラバード号と名付けられていた。
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/1d26d888f8aa4aec2cf54f752da185f7
ホテルローヤル 桜木紫乃
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/7336ab8978fa67681d133f096c2f2390
すばらしい新世界 バックスリー 1932年に発行された破壊的懐疑主義空想物語
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/24ecbe9335f0cce6345980ca1d2c1ad7
わたしを離さないで カズオ・イシグロ 代表作のひとつ 2017年ノーベル文学賞を受賞
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/5f171addb3dc788c75939e82d34be018
夜と霧 ヴィクトールEフランクル 第二次世界大戦時のアウシュビッツでの生活
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/88d701444d03e880344237c875562569
憑神 浅田次郎 貧乏神、疫病神、死神が次々にやってくる、ファンタジー小説
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/9a8f3bea2f8fc5bcdd0be1bb111859ae
漂流教室 楳図かずお 極限状態に設定した世界での人の本性を描く
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/b9d8b6217b3a0cce2bc26ad9c2417a8d
風の影 カルロス・ルイス・サフォン 舞台は第二次世界大戦直前のスペイン、フランコ政権時だった
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病んだ家族、錯乱した室内 春日武彦 部屋は住まわれている方たちの精神状態を表している
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アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス 知能遅れのことについて、天才と対比して語っています
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人間の証明 森村誠一 野性の証明のほうが面白いかな
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闇の子供達 梁石日 東南アジアの臓器売買の実態
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悪魔の飽食、野生の証明 森村誠一 731舞台の話と、東北を舞台にした殺人事件
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もの食う人びと 辺見庸 食らい、語らい、鮮やかに紡いだ、世紀末の食の黙示録
https://blog.goo.ne.jp/photostudioon/e/d49f76c0fc8bf08a643676f2ef03733a