今ひとつ覚えの悪い映画好きのMは、音楽好きでもあ
る。
その彼が「ソフトマシーン」のCDを持ってきた。
なにやら、渋谷陽一が絶賛していたので買ったという
ことらしい。
彼は密かに渋谷陽一を師事しているのだ。
そんな渋谷陽一が奨めていたのでは買うしかなかった。
彼にとっては未知のグループの「ソフトマシーン」、
一体今現在、どれほどの人がこの名前を知っているの
だろうか、こちらとしてはそのことの方が興味ある。
と言ってる自分だが、実際に聴いたのは極最近で、カ
フェのT君から借りて聴いたものが初めてだった。
活躍していたのは、もう30年も前の話で、当時プロ
グレ好きだったら一度は聴いていても良いはずなのだ
が、何故か抜けていた。
渋谷陽一曰く、ジャズロック的、だそうだ。
で、今回聞いてみると、現代音楽的な要素も一部にあ
るが、確かにジャズロック的だった。
それでMに訊いて見た。
私「で、良いと思うの?」
M「うーん、ちょっと」
私「好きじゃないんだろう?」
M「ええ、まあ」
私「大体、ジャズだってそれほど好きじゃないんだか
ら当然というか、始めから分かってんじゃない」
M「そうなんですけど」
本人としては、新たな音楽体験を求めての結果だから、
決して無駄ではないのだが、ついつい余計なことを言
ってしまうのは、こちらの性格のなせる業。
私「ヴォーカルとか入ってるのだったら、ファースト
アルバムがいいよ」
最近知ったくせに、前から知っているような口ぶりだ。
M「そうなんですか」
私「そう」
M「じゃ、ファーストアルバムの方買いますか」
私「それが良いんじゃないの」
次にMは「ベック」のCDを取り出した。
彼のお気に入りだ。
「ベック」と言えば「ジェフベック」しか思いつかな
い年代からすると、何故今になって「ベック」なんだ
と、訝しく思うところだが、これも違う筋から借りて
数枚聴いていたので、「ベック」は「ベック」だとい
う今現在の知識は持ち合わせているのだ。
下手をすると「今時ジェフベックはないよね」などと
言いかねない位の勢いだ。
で、その「ベック」のCDは、結局聴く時間がなくなっ
てしまい、次回にまわすこととなった。
特に好きと言うほどでもないが、新しいものはそれな
りにお楽しみではある。