「ゼア.ウィル.ビー.ブラッド」という映画を観る。
棚に並んでいて、聞いたことがあるタイトルというこ
とで選んだのだ。
アカデミー賞で何か受賞したような記憶はあった。
一応、話題作ではあったはずだ。
監督の名は知らないのだが、「ポール・トーマス・アン
ダーソン」という、「マグノリア」の監督であること
はあとで知った。
「マグノリア」という映画は、何だか小ざかしさを感
じる映画で、凝った錯綜したストーリーの映画という
評価が与えられるのかもしれないが、個人的な評価は
低い。
監督の名前も、その時点で覚えるべき名前ではなかっ
たということで記憶されなかったのだ。
知っていれば、多分借りなかったと思う。
「ゼア.ウィル.ビー.ブラッド」の主演はダニエル.
デイ=ルイス。
いまや名優と言われる役者だ。
特別、好きでも嫌いでもないが、個人的には「存在の
耐えられない軽さ」で印象付けられている。
映画では、その彼の、アメリカ国内で石油で儲けてい
く姿、主に孤独な姿を描いていく。
時代は、第一次大戦の頃から。
経済的な発展をして、資本主義が確立する頃というこ
とになるのか。
事業には成功したが、最後は、人間としてほぼ破滅と
いう、これまた救いのない終わり方をする。
金儲けしか頭にない人間を補完するかのように登場す
る宗教。
その、新興宗教が、主人公とシンクロして発展してい
く。
本来なら救いとなるべきものなのだが、資本主義と表
裏一体であるものとして描かれる。
多分、ここが監督の言いたいことの多くの部分ではな
いかと思う。
自己の利益しか考えない人間と、それを結果的に支え
る宗教の世界。
そんな構造を抱えた結果、今のアメリカがある。
その姿は美しいか?、と多分問うているのがこの映画
ではないかと思うのだ。
しかし、映画として面白いかと問われれば、全くと答
える。
「クラッシュ」「ゼア.ウィル.ビー.ブラッド」「ノー
カントリー」と、アカデミー賞は、本当にアメリカの
問題を取り上げたものでないと駄目なようだ。
今だけかもしれないが、自省の時という感じである。
いずれにしろ明確なテーマ性がないとということなの
だが、「ノーカントリー」の殺し屋以外は、正直どれ
もあまり魅力的とは言えない。
「ノーカントリー」(映画としてではなく飽くまでも
殺し屋)以外は、はっきり言って、観なくてもいいと
いうのが個人的評価である。