この前「紀伊国屋」で買ってきた、ロバート.アルド
リッチ(オルドリッチ)のDVD「キッスで殺せ」を観る。
白黒映画だからというわけではないが、アルドリッチ
の作品の中でもこの時期のものは(これは1955年製)、
アメリカのフィルムノワールというような言い方をさ
れているらしい。
個人的には、他の作品、例えば「特攻大作戦」「北国
の帝王」などを観ているが、娯楽作としてよく出来て
いるという印象はあったが、正直それ以上でもなかっ
た。
では何故今回これを買ったかというと、結局はフィルム
ノワールという言葉に惹かれたのと、特にこの「キッ
スで殺せ」が1部の間でいやに評価が高かったからだ。
興行的には駄目だったらしいが、作品としては評価さ
れているのだ。
一般的に言って、こういうタイプの映画のほうに(興行
的には駄目、要するに売れなかった映画)良いものが
多い、というのは紛れも無い事実である(と言い切れ
るわけでもないが)。
映画の冒頭から、正にフィルムノワール全開である。
女が裸足で道路を走るシーンから始まるのだが、はっ
きり言ってこのシーンはかなり印象的である。
サスペンスの原型か。
シャープでスタイリッシュという言い方は陳腐だが、
ついそんな形容をしたくなってしまうのだ。
スタイリッシュというと思わせぶりな演出を想像して
しまうが(例えばウォン.カーウァイ)、これは1955年
の映画である。
勿論思わせぶりでもなく、小気味良い演出で(大胆な
省略)最後まで疾走する。
主人公は「マイク.ハマー」。
「濱マイク」でもない
どうも「フィリップ.マーロウ」とかぶるのだが、全
然違う人物像のようだ。
ゆすりまがいが得意な、浮気専門の探偵である。
そんな彼が、冒頭の女に関わったことによって、政府が
らみの事件に巻き込まれていくというのが全体の筋で
ある。
最後に「ロスアラモス」「マンハッタン計画」までで
てきて相当大げさなことになるのは、ちょっと行き過
ぎではと思うが、「太陽を盗んだ男」の頃と違い、ま
だまだ知識が広まってないと考えれば致し方ないとい
うより、一つの象徴として考えた方がいいかもしれな
い。
何のことかというと、「原子爆弾」である。
まあ、そんな具体的な秘密はこのさい関係ない。
無名な俳優を主役にした、典型的なB級サスペンス、ア
クション映画の部類になると思うが、質の高い映画で
あることは間違いない。
しつこいが1955年である。
映画史に刻まれるだけのことはある(一部では)「キッ
スで殺せ」であった。