ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】卍

2009年07月14日 22時00分08秒 | 読書記録2009
卍(まんじ), 谷崎潤一郎, 岩波文庫 緑55-4, 1950年
・今の言葉で言うところの、心理カウンセラー的人物のもとを訪れたある婦人の告白。この婦人、柿内園子と徳光光子の同性愛を軸に物語は進み、単なるぐちゃぐちゃドロドロの愛憎劇と思いきや、途中からサスペンスの要素も混じり込んでくる。「嘘をついているのは誰なのか」そして、「狂っているのは誰なのか」 他人が覗き込んではいけない秘密の世界を描いた絢爛な絵巻物。
・現在読んでも強烈な内容なのに、発表された1928年(昭和3年)当時の世間に与えた衝撃はいかばかりだったでしょうか。そんな『谷崎文学』を存分に堪能できる作品です。
・「(作者註、柿内未亡人はその尋常なる経験の後にも割にやつれた痕がなく、服装も態度も一年前と同様に派手できらびやかに、未亡人というよりは令嬢の如くに見える典型的な関西式の若奥様である。彼女は決して美女ではないが、「徳光光子」の名をいう時、その顔は不思議に照り輝やいた。)」p.14
・「(作者註、写真を見ると、お揃いの着物というのは如何にも上方好みのケバケバしい色彩のものらしい。柿内未亡人は束髪、光子は島田に結っているが、大阪風の町娘の姿のうちにも、その目が異常に情熱的で、潤おいに富んでいる。一と口にいえば、恋愛の天才家といったような気魄に充ちた、魅力のある眼つきである。たしかに美貌の持主には違いなく、自分は引き立て役だという未亡人の言は必ずしも謙遜ではないが、この顔が果たして楊柳観音の尊容に適するかどうかは疑問である。)」p.19
・「ああ憎たらしい、こんな綺麗な体してて、――うちあんた殺してやりたい。」わたしはそういうて光子さんのふるてる手頸しっかり握りしめたまま、一方の手エで顔引き寄せて、唇持って行きました。すると突然光子さんの方からも、「殺して、殺して、――うちあんたに殺されたい、――」と、物狂おしい声聞こえて、それが暑い息と一緒に私の顔いかかりました。見ると光子さんの頬にも涙流れてるのんです。二人は腕と腕とを互の背中で組み合うて、どっちの涙やら分らん涙飲み込みました。」p.37
・「わたしと夫とはどうも性質が合いませんし、それに何処か生理的にも違うてると見えまして、結婚してからほんとに楽しい夫婦生活を味おうたことはありませなんだ。夫にいわすとそれはお前が気儘なからだ。何も性質が合わんことはない、合わさんようにするよってだ。(中略)夫の方では私の性質に合わすように努めてるのんですやろけど、それがほんまに気持がびちっと合うのんでのうて、こっちを子供扱いにして、ええ加減にあやしてるように思われますのんで、そういう態度が癪に触って仕方あれしません。」p.46
・「「あての姉ちゃんかって夫あるねんもん、あてもあんたと結婚することはするけど、夫婦の愛は夫婦の愛、同性の愛は同性の愛やよって、姉ちゃんのことは一生よう思い切らんさかいそのつもりでいて頂戴。それがイヤやったら結婚せえへん」」p.69
・「「異性の人に崇拝しられるより同性の人に崇拝しられる時が、自分は一番誇り感じる。何でやいうたら、男の人が女の姿見て綺麗思うのん当り前や、女で女を迷わすこと出来る思うと、自分がそないまで綺麗のんかいなあいう気イして、嬉してたまらん」」p.100
・「つまり私たちは光子さん一人が太陽みたいに輝いて見えて、どんなに頭疲れてる時でも光子さんの顔さい見たら生き返ったようになりますのんで、ただそれ一つ楽しみに命つないでいる。(中略)まあいうてみたら、普通のパッション捧げられても面白ない、薬の力で情慾鎮静さされてしもてても燃えるような愛感じるのでなかったら満足出来へん。――結局二人藻抜けの殻みたいにさして、この世の中に何の望みも興味も持たんと、ただ光子さんいう太陽の光だけで生きてるように、それ以外に何の幸福も求めんようにさしたいいうことになるのんで、薬のむのん厭がったりしたら泣いて怒んなさるのんです。」p.190

?まんじ【卍・卍字・万字】(もと、インドでの吉祥の印で、吉祥万徳の集まる意から、中国で「万」の字に当てて用いたもの)1 もとインドでビシュヌ神の胸毛より起こった吉祥のしるし。仏菩薩の胸・手・足などに現れた吉祥・万徳の相を示すもの。日本では寺院の標識、記号などに用いる。 2 卍のような形。 3 紋所の一つ。卍にかたどったもの。左卍、右卍、丸卍など種類が多い。

《チェック本》
谷崎潤一郎『蓼喰う虫』
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▲閉店【食】Cafe de 凛 [喫茶@室蘭]

2009年07月14日 19時02分00秒 | 外食記録2009
▲閉店「テナント募集」貼り紙あり [2015.7.14記]
Cafe de 凛(カフェ Rin)[喫茶@室蘭][Yahoo!グルメ]
2009.6.9(火)11:40入店(初)
注文 日替ランチ 950円

  
・室蘭の繁華街、中島町のモルエそばのバス通り沿い、『つぼ八 室蘭中島店』の並びにある喫茶店。うっかりすると見落としてしまいそうな目立たない建物です。店名は正確には、"Cafe" の "e" の字の上に点(アクセント記号)がつきます。
   
・店には玄関でスリッパに履き替えて入ります。一目で店全体を見通せる造りで、席は部屋の両サイドのカウンターのみ12席ほど。カウンターの一方はバス通りに面し、もう一方は中庭に面しています。田舎な室蘭とは思えぬ、白を基調とした清潔感のあるステキな雰囲気です。

・メニューは飲み物が中心で、食事は限定10食の日替ランチの他はカレーやサンドイッチぐらいしかありません。注文したのは日替ランチです。
   
・メインのおかずはヒレカツ。3個ついていましたが、なんとそれぞれ、肉のみ・チーズ入り・シソ入りと別な細工がしてあります。肉は柔らかく、かなり良い肉のようです。ソースは複数の調味料を調合したオリジナルなもので、酸味が感じられる美味しいソースでした(粉チーズの味?)。
 
・イカ納豆。食べるとレモンの香りがします。和風料理も器を変えると洋風に見えてしまうから不思議。

・厚揚げの炒め物。
 
・サラダ。
 
・ご飯と、甘い味の味噌を使用した独特の風味のする味噌汁。

・上の食事だけでも大満足でしたが、さらにコーヒーとデザートまで。
  
・小豆の蒸しパン。素朴な味わい。
  
・コーヒー(オーガニック?)。薄味かと思ったら後から苦味が広がるタイプのコーヒーです。上手に、丁寧に淹れてある感じなのですが、豆の味自体が私の好みからはちょっと外れています。

 

・「室蘭にもこんなにステキな喫茶店があったのか!」と目の覚める思いでした。その雰囲気と供に、 "喫茶店" の範疇を超えるレベルの食事が味わえる良店。と、言うわけで、「また食べに行きたい店」 <喫茶・軽食部門> へ追加!

<2009年【外食記録】また食べに行きたい店 喫茶・軽食部門>
★Cafe de 凛 [喫茶@室蘭]

[Ricoh GX200]
コメント (2)
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【写】マッカ沼(苫小牧)

2009年07月14日 08時02分23秒 | 撮影記録2009
●マッカ沼(苫小牧) 撮影日 2009.4.3(金) [Yahoo!地図]

・こちらは苫小牧の外れの田舎道です。苫小牧駒澤大学そばのイエローグローブ(ホームセンター)裏の小道を内陸方向に向かって進み、高速道路をくぐった後左折し、1kmほど進んだ辺り。ここに至るのはかなりディープな(?)道のりです。
 
・草原の向こうに見えるのは『オートリゾート苫小牧アルテン』。苫小牧オケの合宿でお馴染みの場所です。
 
・草地にはのんびり草を食む馬の姿が。
 
・道路脇に『通行止』の看板があり、砂利道がのびています。こちらは冬期間車両通行止めのようです。
 
・道を入るとすぐに左手に小さな池が見えます。
 
・水面は一部氷結中。池の脇を更に奥へ。
 
・なぜこんな辺鄙な池に来たかというと、こちらの小池は地図で見ると『G』の字をした不思議な形状をしているので、一体どんな場所だか見てみたかったという事情だったのですが、地上からは『G』の字は認識できず。調べてみると、こちらは苫小牧市章の『G』マークをかたどって人工的に造成された池だそうです。何のためにそんな池を作ったのかは不明ですが、その昔は整備された公園だったのでしょうか。今では、地元民でも訪れる人の少ない場所だと思います。
 
・ほどなくして、右手には大きめな池が現れます。
 
・雪がとけて間もないので、道は泥でグチャグチャ。道端には不法投棄されたゴミが散乱しています。
 
・こちらがマッカ沼。沼には小魚の群れが遊んでいます。
 
・マッカ沼全景。池の底が目視でき、深さはそれほど無いようです。
 
・向こうには白鳥の姿も。
 
・道路脇の笹薮に獣道があったので入ってみると沼のほとりに出ました。
 
・四羽……、じゃなくて五羽の白鳥。

・地図で確認すると、沼は奥の方までのびているようです。
 
・元来た道を戻り、無事帰還。樽前山方向へ続く舗装道路を更に行ってみると、突き当りには、「関係者以外立入禁止」の何かの施設がありました。地図を見ると、この奥には『トキト沼』という沼もあるのですが、私有地のため現在は入れないようです。

[Canon EOS 50D + EF-S18-200 IS]
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