Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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医療者・科学者のバービー人形の分析@今年のBMJ誌クリスマス論文 🎄

2023年12月20日 | 運動異常症
世界一有名な人形「バービー」は,来年,デビュー65周年を迎えます.「私たち女の子は何でもできる」というスローガンのもと,バービー人形は建設作業員,教師,獣医から裁判官,科学者,医師に至るまで,あらゆる職業に就いてきました.しかし医療者や科学者のバービー人形を分析し,どのような職種に就いているのか,また専門的に正確かを検討した先行研究はありません.英国の一流医学誌BMJ誌の名物企画,クリスマス論文に,医療者・科学者のバービー人形を検討した記述的量的研究が報告されました!

主要評価項目はバービー人形(およびバービーブランド以外の比較人形群)がどのような医療・科学サブスペシャリティに従事しているかを明らかにすること,およびこれらが臨床現場および実験室の安全基準を満たしているかを明らかにすることです.

結果ですが,92体のバービー人形が対象となりました:医師(n=53),科学者(n=10),科学教育者(n=2),看護師(n=15),歯科医師(n=11),救急隊員(n=1).バービーブランド以外の人形65体(医師(n=26),科学者(n=27),看護師(n=7),歯科医師(n=2),エンジニア(n=2),MRI技師(n=1)も分析しました.



バービーブランドの医療者人形(n=80)は,主に子ども(66%、n=53/80)を対象にしており(小児科関係),大人を対象としている人形はわずか3体(4%)のみでした.つまりバービー人形は幅広い医学的サブフィールドを表現することはできていませんでした.



また12体の科学者人形のうち,髪型や服装に関して適切な個人防護具の要件をすべて満たしているものはありませんでした.付属品としては白衣,顕微鏡,聴診器,眼鏡など,子供たちがステレオタイプ的に医療者や科学者を連想するものが付属していました.比較群の人形はバービー人形よりも幅広い年齢層と民族のグループを提供していましたが,やはり適切な個人用保護具を着用しておらず,職場において怪我や感染症に見舞われる深刻なリスクを抱えていました.

以上より,医療と科学をテーマにしたバービー人形は,明日の医療者・科学者の育成に役に立ちます.玩具会社は,これらの人形が臨床現場と実験室の安全基準を満たすことを目指すこと,そして医療と科学の職種をもっと多様化すべきことが大切と思われました.とくに若い女の子たちのためにも,女性がまだ少数派である医学的・科学的サブスペシャリティへのバービー人形の進出を検討すべきと考えられました.単なるおもしろ論文ではなく,子供たちの未来を考えると,じつは大切な論文のような気がします.
Klamer K. Analysis of Barbie medical and science career dolls: descriptive quantitative study. BMJ. 2023 Dec 18;383:e077276.

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