どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

細身のジャック(2)

2010-08-08 04:10:35 | 連載小説
 正門を出ると、正夫は道路を挟んだ土手を見ながら右に曲がった。  病院寄りに数メートル進んだところで道を渡り、雑草の踏み跡をたどって斜面を一気に登った。  緑陰をめがけて、濠からの風が幾重にも吹き上げてきた。  折りしも通過中の電車が、心地よい振動音を風に含ませている。  正夫は一瞬、土手の上でたたずんだ。  泡のように皮膚表面で弾ける感覚を、立ち止まって味わった。  水と緑のかすか . . . 本文を読む
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