犬の幸せ不幸せ(3)
森の生活に戻った日、久しく顔を見なかったチャコちゃんが飼い主に連れられてやってきた。
こげ茶色に黒色を重ねたマホガニー家具を思わせる小型犬で、ピカピカとした毛艶から一目で幸せな暮らしぶりが見て取れる。
この犬、相手が女主人の知り合いと分かれば友好的な表情をするが、そのあと特別に尾を振ってじゃれ付いたりすることがない。
クールというのか、わきまえが . . . 本文を読む
犬の幸せ不幸せ(2)
クーちゃんは、現在の飼い主に拾われる前はかなり不運な境遇にあったらしい。虐げられたせいか人間を怖がり、通りがかりに名前を呼んでも声も出さず、姿も隠したままだった。
生きる気力もなくしてしまったように思われた。反応がまったくないまま一年近く過ぎた。
ところが、冬のある日チョッキを着た太目の犬が飼い主に連れられて散歩しているではないか。
「えっ、クーちゃ . . . 本文を読む
犬の幸せ不幸せ(1)
昨年の十二月から今年の六月末まで、およそ七ヶ月間に亘って東京暮らしが続いた。
月に一度ぐらいは北軽井沢に行っていたが、一泊してあわただしく戻るといったことの繰り返しだから、近辺の事情を耳にすることもなかった。
ところが今回やっと東京の仕事から解放されて、山荘の方へ腰を落ち着けることができた。
森を離れていた知人も帰ってきて、いろいろと周辺住人の出来事を . . . 本文を読む
リョウちゃんの戸惑い
先日また雪の残る北軽井沢へ行ってきた。
二、三日滞在しただけだが、ご無沙汰していたリョウちゃんと交流できたのが大変うれしかった。
まず先に挨拶してくれたのは北海道犬のリョウちゃんだった。
山荘に着いたとたんに、ワン、ワンと呼びかけてくる。見知らぬ通行人などに吠えるときは間隔の詰まった甲高い声だが、挨拶のときにはどこか反応を探っている間合いが感じられる。 . . . 本文を読む