どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

小説 『折れたブレード』05

2016-02-28 02:22:55 | 連載小説
       (逆縁)    正孝は、空港ターミナルのタクシー乗り場に向かい、さてどうしたものかと迷いを感じていた。  艶子の実家をめざして来たものの、先に訪問の了解を得た方がいいか、近くまで行って様子を見た方がいいのか悩んでいたのだ。  ショルダーバッグを肩にかけ、一方の手に観光地図を持ったまま歩いていると、待機するタクシーの扉がいきなり開いた。  ハッとしたが、 . . . 本文を読む
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小説 『折れたブレード』04

2016-02-22 00:08:17 | 連載小説
        (消えた風紋)    市民会館で目にした江戸手妻師の印象は、翌日になっても正孝の脳裏から離れなかった。  昨夜のネオザール社との電話では、堂島という男の風貌をしっかりと確認することはできなかったが、写真などでもう一度突き合わせる必要を感じていた。  そのためには、パンフレットで目にした手妻師一門の弟子の舞台姿を探すことだ。  調べてみると、 . . . 本文を読む
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小説 『折れたブレード』03

2016-02-15 02:24:45 | 連載小説
        (風車の仕掛け)    正孝は閉館間際の市民会館に駆けつけ、広報担当の職員に過去の公演について情報を求めた。 「公演の全てですか」  職員はシャツの袖をたくしあげて、困惑したように正孝を見た。 「いや、何年か前に江戸手妻の出し物があったかどうか、それを知りたいのですが」 「ああ、それなら覚えていますよ。配布したパンフレットがファイルされて . . . 本文を読む
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小説 『折れたブレード』02

2016-02-07 00:00:00 | 連載小説
       (手妻師)    翌朝、伊能正孝は、7時10分発のJAL便で、羽田から出雲縁結び空港へ向かった。  約1時間30分のフライトで、宍道湖に突き出た滑走路に着陸すると、到着ロビーの端に空港派出所と表示された一角を見つけそこに立ち寄った。  地元警察の管轄だろうから、ここで聞けばある程度の見当を付けられると思ったのだ。 「出雲署に山根さんという方はおられます . . . 本文を読む
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