天草薫風
吉村と久美の新家庭がスタートして半年、こんどは八代の兄が嫁取りを考え出したとの連絡が母からの手紙に記されていた。
相手は地元のスナックで働く二十八歳の女性とのことだった。
兄が米屋の会合の流れで立ち寄った際、カウンターの奥でママを手伝う控え目な女の様子に心を引かれたらしい。
「本人がいうには天草生まれの家庭的なオナゴで、浮いた話など何もないんじゃと。ばってん、よかオ . . . 本文を読む
カウベルの響く町
唐崎の後について会社訪問を繰り返す中で、中堅の旅行代理店との商談が有望になりつつあった。
そうした進行の途中、経理畑の役員との懇談の際、近ごろの若者の旅行事情が話題になったことがあった。
「まあ、短期のレジャーではハワイ、グアム、韓国、台湾といった近場が主流ですが、このごろは新婚旅行も含めてタヒチ、モルディブ、バリ島あたりが人気になってますねえ」
「いやいや、 . . . 本文を読む