『米長邦雄のさわやか人生』
西武新宿線の準急停車駅「鷺宮」近くに十数年間住んだことがある。
線路と直角に交わるバス通り沿いに商店街があり、昔ながらの電気屋や蒲団屋、文房具屋、それに時計屋、雑貨屋、貸本屋といった店が軒を並べていた。
現在は○○店と呼ぶのが習わしのようだが、当時の雰囲気はどうしても上記のように書かないと伝わらないのでご容赦願いたい。
ぶらり街歩きをしても . . . 本文を読む
ザクロ
(城跡ほっつき歩記)より
取り残された石榴の実が一つ通りに面した塀際のてっぺん近くに点っていた木枯しが吹いた翌日のこと裂けた果実から紫色の悲しみを覗かせたおまえのルーツは中近東オアシスの広場で音曲に乗って踊っていた舞姫の瞳かそれとも 砂漠の砂に混じった輝石の欠片なのかあるいは 戦火の記憶を閉じ込めた痛みの色シルクロードを旅して 東 . . . 本文を読む
『孫悟空と憲法9条』
衆議院議員選挙の投票日が12月16日(日)に迫る中、三つの大きな争点の陰で「憲法改正」についての重大な発言がなされている。
自民党党首の安倍さんと、日本維新の会の代表となった石原さんの二人が、選挙後にタッグを組んで改憲に向けての行動を起こしそうな気配である。
それぞれが束ねる党内情勢は、現在のところ一本にまとまっているとは思えないが、メディアの予測 . . . 本文を読む
男郎花
女郎花
おまえさん 待ってたよ
秋の野原で 声がする廓の中で 病死した
おみなという名の十六歳投げ込み寺から 抜け出して
丑三つ時に 待ち合わせ
廓に出入りの 絵草紙屋
商い上手の 色おとこ女郎を弄う不実さに
気づかず芽生えた 一途な恋 おみなと交わす目配せは
秋の暮れ六つ 廓抜け
&nbs . . . 本文を読む
野風没後一年を経た頃、木戸野風全句集を出そうかとの声が同人の間から起こりました。 『石心』主宰の私としてはもとより賛成で、亡くなった主人の魂魄を慰めるためにも、いずれは取りかかるつもりでおりましたが、ちょうど三年忌の記念事業として本腰を入れてやることにしました。 追悼号発行の際、それなりに手をかけた年譜を作成し、ホトトギス時代、『石心』時代の活躍を、それぞれ高名な俳人に偲んでもらっては . . . 本文を読む
私を誹謗する一通の手紙が届けられたのは、庭の連翹がひときわ輝いた春の一日でした。 女子事務員が渡してくれた依頼の原稿や寄贈雑誌などの郵便物の中に、その稚拙な上書きの封書が混じっておりました。 どうせ名もない結社の案内だろうと無造作に封を切ってみますと、市販の便箋の第一行に「木戸野風の子供より」と題して、奇想天外なことが書いてありました。 細かな字で六枚にもわたりびっしりと書き連ねた . . . 本文を読む