ぼくの部屋は四方の壁にモノが積み上げられていた。 婆やと隣の部屋にいたのだが、誰かが忍びこんでゴソゴソやっている気配がする。 覗きに行くと天井に近い収納棚の蓋が三分の一ぐらい開いていて、いましもそこへ人間がもぐりこもうとしている。 ぼくはその瞬間を目にしたのだが、立ちくらみがした途端に今見た光景が本当のことかどうなのかわからなくなってしまった。
そこで、何が起こっ . . . 本文を読む
アメリカフウロ
(城跡ほっつき歩記)より
はるばる日本まで飛んできて
(おっと、貨物船で運ばれたんだっけ)
最初にトラックに乗せられ上陸したのが
ターミナルに続く幹線道路の道端だった
麻袋に必死にくっついてきて
着地した途端に雑草の中に隠れたんだ
(干し草に紛れて密入国した仲間もいるが)
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鉄急須
おいらは百年も前に岩手南部で生まれたのだが
めぐりめぐってお茶好きのご隠居の家にいる
刀と同じ砂鉄をもとに鍛えられ
無口な職人に手作りされたのだ
色が黒いのは炭火で金気止めをされたから
透明漆で重ね塗りをする流儀も江戸の昔から
おいらを作った南部鉄職人の名は鉄瓶のテツ
夜更けの屋敷でシュ . . . 本文を読む
(あるジャーナリストの死に思うこと)
ーー『犠牲(サクリファイス)』との符合が示すものーー
なんという現実の厳しさであろうか。
なんという人間の酷(むご)さであろうか。
連日ニュースとして報道されてきたイスラム国による人質拘束事件は、日本人二人の処刑という悲惨な結末をもって当面の終止符を打った。
しかし、この事 . . . 本文を読む