千日紅
(城跡ほっつき歩記)より
母が飛んだ
夕暮れの空へ飛んだ
団地の花壇には苺のような千日紅
ついばむ鳥が嘴から突っ込んだ
娘は電気もつけずに泣いた
頼りの父は半年前にツガイの相手を変えた
今どこのねぐらに籠っているのやら
見捨てた団地の窓をテレビは写すだろうか
娘は泣き疲れた . . . 本文を読む
私の仕事は、会社まわりの営業マンである。
売り込みは思い通りに行かず、それでも部長相手に粘っていたが、一息入れるために社屋内の売店のようなところに立ち寄った。
そこで目に付いた揚げ物を買って食べていると、急にお腹が痛くなった。
おかしいなと思いながらトイレを借りて用を足そうとするのだが、便器の蓋を上げると黒い汚れが点々と飛び散っていてすぐには腰を下ろせない . . . 本文を読む
カタクリ
(城跡ほっつき歩記)より
カタクリは地上のスティーヴン・ホーキング
天窓をみつめて宇宙の夢を見つづける
夜が明けると周りは緑の渦に囲まれ
彼を支える家族や友人が漂流しはじめるのだ
カタクリの葉のまだらは星雲の妖しさ
始まりも終わりも見定められない時間の概念に
ホーキングは時空の特 . . . 本文を読む
夜顔のつぼみ
(季節の花300)より
昼間ソフトクリームを舐めていた娘が
夜になると大輪の花を咲かせる
その変貌に驚き人は娘を夜顔と名づけた
むらさきの朝顔がしぼむ頃
昼顔が遅い目覚めの顔をのぞかせて
おはようと気怠い声をかける
かなかなかなと樹間をわたる蝉の声
夏から秋へ移り行く季節の . . . 本文を読む