四月に入って最初の日曜日に、雄太はエッちゃんとデートした。
約束どおり土浦駅の観光案内所前で待ち合わせをし、バス乗り場から北条大池に向かった。
桜川堤のサクラもきれいだけれど、ちょっとだけ遠出をしてみないかと行き先変更を提案したのだ。
北条大池というのは出入りの業者から聞いた桜の名所で、筑波方面へ向かう路線バスの途中、有名なゴルフ場にも隣接する風光明媚な場所にあるとのことだった。
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ホテルの駐車場で二時間、シャレードで二時間、雄太は時間待ちをすることになった。
この夜は柳田の接待が主で、仕事がらみの込み入った話があるらしく、雄太の同席は許されなかった。
柳田は鷹揚に雄太も一緒になどと誘ってくれたが、あらかじめ神山から申し渡されていたので、丁重に辞退した。雄太自身、気詰まりな場所にいるよりも、一人で時間を過ごす方がよほど楽だと思っていた。
クルマで近くのラーメン屋 . . . 本文を読む
冬のうちに、大地を削る作業ははかどっていった。
全長5・5キロメートルの周回走路を持つ楕円形のコースが、しだいにその姿をあらわにし始めていた。
もともと松林や雑木まじりの自然林が広がる丘陵地を、削ったり均したりしながら重機が平準にあわせていく。
その中を、先行する少人数の測量チームが黙々と動き回っている。雄太は、その中の一人で同世代の佐藤に好奇心を抱いていた。
彼はいつも、スタッフ . . . 本文を読む
雄太はランドクルーザーのエンジンをかけた。
箱型の車体がブルブルと震え、運転者の昂ぶりに同調して鉄のマシーンも興奮しているように思えた。
L字型に矯正された背中と脚が、朝の冷気の中でいっそう緊張した。内部から溢れ出る活力を、筋肉の強張りで押しとどめようとしているかのようだった。
雄太はまだ若い。九月末で二十四歳になったばかりである。
地方の高校を卒業して五年余り、一度地元の信用組合 . . . 本文を読む