(薪小屋の美しさ・六合村にて)
赤岩集落については、何年か前にNHKテレビでも紹介されていた。
この地域全体が、『重要伝統的建造物群保存地区』の指定を受けた年だったと思うが、狭い村中の道を散策する中年のご夫婦や、若い女性の二人連れを見かけたものだった。
<長英の隠れ湯>に入った後、野菜など地元特産品をあつかう<赤岩ふれあいの家>に立ち寄ると、赤岩散策マップが用意されている。 . . . 本文を読む
『長英の隠れ家』(湯本家)
六合村の美しさを何回かに分けて書いたのは、1年半も前の4月頃だったろうか。
ティータイム(44)から四、五回にわたっての事で、その後も機会をみつけて訪れているが、こころが洗われる思いはいまも変わっていない。
混雑するお盆休みを少しずらして、短い夏休みをとった。
何をおいても畑の草取りを済まさなければならない。
植えっぱなしの馬鈴薯とインゲンが、 . . . 本文を読む
(緑の闇)
霧男は、自分の思いに気づいた瞬間、居ても立ってもいられない焦燥を覚えた。
十七歳になった秋のことだった。
兄嫁の後ろ姿を見ると、家の中でも山仕事の最中でも息苦しくなるのだ。
長男の雲雄とは、ちょうど十歳年が離れている。
去年長男のもとへ嫁に来た花余とは五歳の隔たりがある
花余が来たことで、霧男の心は落ち着きを失くしてしまった。
(なんで、こんな山 . . . 本文を読む
(壁の中)
巣鴨プリズンが解体されたとき、ある独房の壁の中から奇妙な塊が転がり出てきた。
公には報道されなかったが、それは高温の熱によって溶かされたコンクリートが、冷えて固まった状態に見えた。
普通、ブルドーザーで破砕された壁は、捻じ曲がった鉄筋を除けば、セメントと砂、砂利による組成が一目瞭然だった。
それに対し、発見された塊は内部でガラス質の粒子が滾り、流れ . . . 本文を読む
(そんなことかよ)
雪道をつま先だけで走っていると、向こうから自転車で疾走して来る男と出会った。
あぶない!
身をかわしながら、右ひじで通り抜ける空気を弾き飛ばした。
後ろは見ない。
右ひじに異変を感じなかったからだ。
しかし、いずれ男が追いかけてきそうな気がした。
友人の五郎ちゃんが、いつの間にか追いついてきた。
やっぱ速い . . . 本文を読む