ムギナデシコ
(城跡ほっつき歩記)より
そよ風に誘い出されて
ムギナデシコが空に漂う
花弁に書き込んだ矢印が
天気図に幸せの風向きを描くのだ
そよ風の息継ぎは微かだが
花びらに伝わる 1/f のゆらぎ
空き地から立ち昇る草いきれと
重力の気配がせめぎ合う真昼の胸騒ぎ
あ . . . 本文を読む
百合水仙
(城跡ほっつき歩記)より
年上の女性が好きで
二十四歳の時に
子連れの未亡人と結婚した男が
三十年過ぎても坊やのような顔で
同窓生にのろけてみせた
初めのうちは上げ膳据え膳だったけど
近頃じゃ俺が飯炊きさ
至れり尽せりされるのもいいが
弱ってきた女房をいたわってやると
しみじみ夫婦で . . . 本文を読む
日記をつけるという作業を厭わない信念の人は、今どきどれぐらいいるのだろうか。
そして、どういった立場の人、どういった職業の人に多いのだろうか。
小学校時代の絵日記以来、一度として日記に関心を抱いたことのない当方としてはまったく見当もつかないことである。
ただ今回、紀田順一郎氏の著作に触れることによって、日記というものが俄かに輝 . . . 本文を読む
檸檬
(季節の花300)より
女の子が爆発した
なんという絵空事か
こんな空想をしたのは 誰だ
悲嘆と嘔吐を一緒くたにして
世界を腰砕けさせようというのか
梶井基次郎の檸檬は 手榴弾だ
青春の甘い想念に驚いたものだが
女の子には甘える親もない
目には砂漠の色を浮かべ
絶望の影さえ . . . 本文を読む
アリウム(花葱)
(城跡ほっつき歩記)より
アリウムは 花材のルネサンス
乾拭きして 黒光りする廊下に
かあさまが活ける 無造作な生花
素朴な技に 和ガラスが微笑む
朝の緑茶をお淹れして
小粒の梅を二つ三つ
とうさまの書斎に古書の薫香
創作の場に力みなぎる
忘却の歴史に 血を通 . . . 本文を読む
『ほっと初詣』
散歩がてら、今年も深大寺へ初詣に行くことにした。
二日の初夢は、朝寝坊しているうちにすっかり忘れてしまって、好かったのか悪かったのか。
ただ、富士山でも鷹でも茄子でもなかったことは間違いない気がする。
そんなわけで、午前中から二時過ぎまで箱根大学駅伝を楽しみ、ボチボチ運動不足解消にと出かけることにした。
途中、運動公園を . . . 本文を読む