フジバカマ
(城跡ほっつき歩記)より
藤色のトッパーをまとったキミコの姿は
いまでも僕の胸腺を熱くする
風が冷たくなった夕暮れの道端で
あなたはフジバカマのように微笑んでくれた
肩にまわした僕の手のひらに
ふんわりと温もりを返してよこした貴い人よ
安物のコートを着ていたかもしれないが
月の出を待ちわ . . . 本文を読む
星空
(ウェブ無料画像)より
夜空を眺めることが少なくなって
ぼくの夢はまとまりがなくなった
もともと夢なんてまとまりがないもの
そういって揶揄するならすればいい
ある夜ぼくは吉行淳之介の本を読んだ
『月と星は天の穴』を探し当てたのだ
世界を動かすほどの力はないが
文章が醸し出す滋味の . . . 本文を読む
アメリカアサガオ
古い家から出てきた老女が
向かいの家のブロック塀に向かって
いきなり落ち葉を撒き散らした
「だらしのないジジイだ」
塀越しに枝を伸べるハナミズキの葉が
道路に散らばるのを掃いているのだ
「一度だって掃いたことがないんだから」
老女はよほど腹に据えかねているらしい
しかも塀ぎ . . . 本文を読む
ホトトギス
(城跡ほっつき歩記)より
キミがやんちゃな理由を挙げてみると
まずしょっぱなはその名前さ
芭蕉の句にも登場するホトトギスと一緒なのに
杜鵑草と書かなきゃ区別がつかないんだ
次にはキミの外見さ
花とは思えない異様な姿で
いまにも掴みかからんばかりの肉にくしさ
鶏の足爪を連想するのも無理はな . . . 本文を読む
ポピー
(季節の花300)より
駅に通じる商店街の歩道を行くと
ガラスの扉を開けて女性が出てくる
彼女の手には白いタオルが握られ
おもむろにショーウインドウを拭き始める
ぼくが出勤する時刻とかさなるのか
おなじ光景にときどきぶつかる
彼女は街の不動産会社の事務員で
ちょっぴり背の高いベテラン社員なの . . . 本文を読む