〇 行く秋や手をひろげたる栗の毬
今回は続・猿蓑からの一句である。
〈ウェブ画像からお借りしました〉
芭蕉は伊賀の里の出身だけに栗の毬と伊賀の忍者のしがらみを掛けて解釈する方もいるようだ。
確かに伊賀の人々の結束は固く、外部へ出ていくことは難しかったのではないかと想像できる。
ただ、芭蕉は少年のころから江戸の俳諧に憧れていて、機会を見て江戸に行 . . . 本文を読む
雲の峰いくつ崩れて月の山
「奥の細道」の中でも芭蕉が一番行きたかった場所が月山ではなかったか。
歌枕でもあり憧れの地だったと思う。
出羽三山の最も奥に位置し、湯殿山などを経たのちに到達できる霊峰である。
季節は夏で険しい道をたどる芭蕉の目の前には次々と入道雲が湧き視界を遮る。
月山はどこにあるのか。
不安の思いで登っていくと、雲の峰がいくつもいくつも崩れ . . . 本文を読む
梅が香にのっと日の出る山路哉
今日の名句は厳しい冬を旅の中で過ごした芭蕉が春を感じた瞬間の喜びを表した作品である。
山吹の句の「ほろほろ」もそうだがこの句の「のっと」の俗っぽい表現は芭蕉の真骨頂である。
平明さを心掛ける軽ろみがいっそう梅の香りを引き立てている。
山吹の句の場合は「滝の音」が聴覚を強調していたが、今回は「梅の香」が嗅覚を刺激する。
山並みの上から「のっと . . . 本文を読む
今回注目するのは
「石山の石より白し秋の風」
という芭蕉の名句である。
この句は越前の国の古刹 (こさつ=古い寺) 那谷寺に立ち寄った時に詠まれたとされている。
那谷寺は灰灰白色の凝灰岩でできた山腹の洞窟の中に観音堂がある。
千手観音を祀るお寺で、奇岩として知られている。
「石山」と言えば、普通は近江の石山寺を指すが、那谷寺〈石川県〉の石は近江の石山よりも山肌が白いので . . . 本文を読む
今回は下記の解説をそっくり引用させてもらった。
俳句の教科書
https://haiku-textbook.com/nomishirami
【蚤虱馬の尿する枕もと】俳句の季語や意味・表現技 …
この句の作者は、「松尾芭蕉(まつおばしょう)」です。 松尾芭蕉は『野ざらし紀 . . . 本文を読む
〇 ほろほろと山吹散るか滝の音
この句は『笈の小文』〈おいのこぶみ〉に収録された名句である。
笈の小文=芭蕉が貞享4年(1687年)10月に江戸を出発し、東海道を下り、尾張・伊賀・吉野・和歌の浦などを経て、須磨・明石を遊覧した際の道中に詠んだ俳句を交えて記録した紀行文である。
山吹の花は風もないのにほろほろと散る。
吉野川の支流の岩間からは滝が流れ落ちていて . . . 本文を読む
〇 山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉
この句は奥の細道に収録されている作品で芭蕉が山路を歩いていて足元にふと菫の花を見つけた時のほっとした心境を詠んだものである。
菫という花は可憐に見えるがなかなか強靭な植物で、木の枝の陰などでもちょっとした陽だまりを見つけて花を開く。
意識せずとも心細さを感じていた芭蕉は陽だまりに咲く菫を見つけてなんとなく共感を覚える。
曽良や . . . 本文を読む
〇 田一枚植えて立ち去る柳かな 芭蕉
一般的には、歌枕にある遊行柳の木の下にたたずんで懐古の情にふけっている間に、農民たちは田を一枚植え終わり立ち去った。
思わず時が経ったことに気づき芭蕉もも柳の元を立ち去った。
他の解釈もあるようだが、ぼくはいかにも芭蕉らしいと思うのでこの解釈に賛同する。
参考=遊行柳は栃木県那須町芦野に所在していて、芦野の町並みや芦野氏陣 . . . 本文を読む