ユキノシタ
(城跡ほっつき歩記)より
奥鬼怒の夫婦が淵温泉を目指した八月
よれよれの軽自動車で灼熱の太陽に焼かれ
川俣温泉を横目にひたすら砂利道を遡ったのは
主従3名の俳句吟行が目的のはずだった
宿の主人のもてなしは山奥で採取したマイタケ
20センチもある天然 . . . 本文を読む
ハマナス
(城跡ほっつき歩記)より
おめらおめら ことしもハマナスが咲いたど
なんてきれいなんだ おらが嫁っことドッコイだべ
アハハ こんなこと嫁がきいたら
おど ばかいうでねえと顔赤くすっぺなあ
ハマナスは一重瞼のおなごのように美しか
細めた瞳からは潮騒の音が聴こえてくる
浜辺 . . . 本文を読む
机にたまった埃が差し込む光に白く浮いていた。煙草の灰も落ちた位置で崩れかけている。むしり取った帯封、読みかけの経済誌、用済みの原稿などが散乱し、それらの猥雑な配置の中で、真新しい背広を着た穂積隆三が話し続けた。
「・・・・まあ、信じてもらえるかどうかわからんが、わたしは実のところ流星雨を見たも同じだと思っているんだよ」彼は眼前にその光景を描こうとでもするように、肘を伸ばし、掌をひらつかせた。「 . . . 本文を読む
その日、穂積隆三は夫人とともに家を出た。
ホテルへ直行するのも芸がないので、銀ブラでもしようと相談がまとまり、肩を並べての散歩を楽しんだ。
四丁目のやや奥まった場所にある郷土料理店で、北海道の味をたっぷりと楽しみ、再び大通りに出たときは宵闇が迫っていた。
あるいは宵闇というには、少し暮れ残っているという時間帯だったかもしれない。空がどんよりと重く、それが街全体を暗くしていたのだろう。 . . . 本文を読む