どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)25 『虻の計略』

2010-02-22 22:22:22 | 短編小説
     (虻の計略)       女夫淵の駐車場にクルマを停め、そこから先は徒歩で進んだ。  夏のはじめの昼下がりのことだった。  鬼怒川上流に点在する温泉の一つ、八丁の湯を目差す旅だった。  川沿いに造られた小道を歩き、道が崩れたところは川縁の石の上を拾い歩きした。  師匠の青山雨聴と弟子二名による、俳句吟行会の最終目的地であった。  弟子の一人は高校生の剛史、もう一人は注 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)24 『二匹の猿とヒヨドリと』

2010-02-15 02:35:19 | 短編小説
     (二匹の猿とヒヨドリと)       藤巻が神楽坂で働いていたころ、職場に近い築土八幡神社の境内で、猿を彫りこんだ珍しい石塔に見惚れたことがある。  二匹の猿が戯れているような図柄で、猿田彦神を祭る庚申塚の一つとして知られていた。  普通、庚申塔は「庚申」と文字で刻むか、「見ざる、聞かざる、言わざる」を象る三匹の猿の図を配することが多いが、この神社のものは違っていた。   . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)23 『ようこそ』

2010-02-09 00:40:43 | 短編小説
     (ようこそ)            長野県のある町に小高い丘がある。  そこに七年ほど前、老人ホームが開設された。  幸四郎は、認知症の母親を抱え五年ほど自宅介護をつづけていたが、妻の疲れが目立ってきたため二十キロほど離れたその施設に入所させることにした。  妻の聡子は、長年にわたって母の面倒をよく看てくれた。  最初こそ単なる物忘れと区別がつかないぐらいだったが、あれ . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(96) 『ロバではありません』

2010-02-04 18:09:00 | ペット
     (ロバではありません)  花見に誘われ、いそいそと散歩しているのは、テレビ・スターのミニホース。  といっても、一度どうぶつ番組に登場したのを見ただけで、名前も性別も知らないのです。 「ロバではありません」  飼い主の女性が、ぼくの間違いを訂正してくれるまで、小さいというだけで驢馬と思い込んでいたぐらいですから。  それはともかく、樹木の根方に生えた雑草を夢中で食べるミニホース . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(95) 『野川の水ぬるむ』

2010-02-04 18:04:07 | 行事
    (野川の水ぬるむ)  井の頭恩賜公園のサクラを見た翌日、深大寺、野川方面へ脚を延ばした。  東八道路~甲州街道を結ぶ武蔵境通りの拡幅工事が終了し、自転車道路がど~んと繋がった。  深大寺まで自転車で8分、野川まで12分、出来立てのサイクリング・ゾーンを走るのは快適だ。  橋の手前を左へ。すぐに土手が出てくるから、こちら側の堤でも好し、対岸に渡っても好し、桜の枝のアーケードだ。  自 . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(94) 『吉祥寺は血の通った街』

2010-02-04 18:00:34 | 行事
    {吉祥寺は血の通った街)    『日本一住んでみたい町』ランキングで、吉祥寺は一位なんだそうだ。  最寄り駅なのに、普段は人込みが煩わしい・・・・と、ぼやきながら利用していた。  しかし、今回は井の頭公園の桜を見たついでに<ハーモニカ横丁>から<ダイヤ街>の辺りをうろついてみた。  ハーモニカ横丁は、以前よりも明るくなったとはいえ、狭い路地の左右に個性的な店が連なっている。  長屋 . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(93) 『井の頭恩賜公園さくらフィーバー』

2010-02-04 17:55:28 | 行事
    (井の頭恩賜公園さくらフィーバー)  季節は春真っ盛り、近くの名所からサクラ画像を投稿する。  手はじめに、近場の井の頭恩賜公園。  先の土曜日、自転車でひとっ走りして撮ってきたものである。  まずは、この写真。  優雅にスワン・ボートに乗っている湖面の親子は楽しげだが、鉄柵で区切られた通路には人間がわんさか。  やっと前面に出て、パチリと記録した。  コンビニや通り沿いの飲食店 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)22 『やもめのジョナサン』

2010-02-01 05:47:59 | 短編小説
     (やもめのジョナサン)      アダルト・ビデオの撮影に、木造アパートの一室を提供したことがきっかけで、衰えかけていた好奇心が埋火の灰を取り除いたように息を吹き返した。  ばあさんが死んで間もなくの頃は、時たま立寄る居酒屋の女将がちょっかいを掛けてきたが、今ではこちらから敬遠して近くを通ることもしなくなっていた。  色仕掛けで誘いを掛ける女の魂胆が透けて見えて、すっかり興 . . . 本文を読む
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