どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)49 『松原遠く』

2011-04-26 02:09:32 | 短編小説
     (松原遠く)「敏彦さァ、あそこに一本だけ立っている松はなんで一本だけなんだろうねえ?」 九十二歳のヨシ婆が、眼脂のたまった瞼を眇めながら孫に訊いた。 テレビ画面には被災した陸前高田の海岸が映っていて、多くの人に愛されてきた高田松原が跡形もなくなくなっている惨状を目にしているところだった。 跡形もないという言い方が当たっているのかどうか、津波が攫って行ったあとの光景はさっぱりしすぎている。 . . . 本文を読む
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むかしの詩集とフォト日記(20) 「炉端話」

2011-04-20 04:54:07 | ポエム
     恵みの山      「炉端話」    (山ねずみ)   大風が吹いて   栃の実がどっさり落ちた   おれたちは総出で採り入れだ   両手で持つと前が見えないから   尻尾でくるりと巻いてエッサエッサ   秘密の場所に運んで冬籠りの準備だ   ことしは豊作だから仲間も増える   熊のおやじと競争でエッサエッサ       (いわな)   川の上流 . . . 本文を読む
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むかしの詩集とフォト日記(19) 「落人」

2011-04-15 00:09:35 | ポエム
     奥へ      「落人」   笛の音は沢を縫い   流れにのって   けものの眠りをいやした   どこから踏み分けて来たのか   岩陰に身を寄せる主従五人   いまだ夜気のきびしいなか   思いのたけをこめて息をつかう   月はなく   山峡の空に星だけがぬれて光る   優勝劣敗は生きものの掟   ふりかえる心は水に流さなければならない . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)48 『枕の下』

2011-04-11 03:35:48 | 短編小説
     (枕の下) 静かな庭が広がっていた。 一面の芝生に、月光が降り注いでいた。 正孝は、蚊帳の中から外を透かし見た。 もうすぐ、彼のいる離れに艶子が忍んで来るはずだった。 京都の夏は暑い。 承知で秘書と出かけてきたのは、自然エネルギーの有効利用に関するシンポジウムが、二日間にわたって開かれたからだ。 この夜は、艶子とともに学会の疲れを癒すつもりだった。 めぼしい発表を分類整理したあと、夜をこ . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(125) 『地震速報の怪?』

2011-04-05 00:31:54 | コラム
     (地震速報の怪?)  最近、気になることがある。  いわゆる東北・関東大地震の余震回数が減ってきた中で、ときどき震源域の異なる地震がテレビ画面で速報されながら、数秒後に別の震源地が示される現象である。  初めて怪訝に思ったのは、秋田県など日本海側を震源域とする地震として画面上に×印が付けられたのに、その後各地の震度や地名がその地域とは違った形で表示されたからである。  実は、 . . . 本文を読む
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