どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)87 『三足の靴』

2013-04-30 02:10:40 | 短編小説
   母が前触れもなく家出した日、一人娘の夏子が札幌の病院で無事に女児を出産した。  五月の連休を利用して妻と共に臨月の夏子を見舞ったあと、私は休みの最後の日に新千歳空港から東京に戻っていた。  しばらく札幌に残って娘の面倒をみることになった妻が、予想外の冷え込みで冬物のセーターを送ってほしいなどと言ってよこしてから、三日目のことだった。  家には八十歳を過ぎた私の母が居る。 . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(160) 映画『奇跡のリンゴ』に期待

2013-04-26 00:48:09 | コラム
       (それでも、やっぱり本当の奇跡は木村秋則さん)         6月公開の映画「奇跡のリンゴ」で彼の人生が描かれる           NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも注目されたリンゴ農家・木村秋則さんの生き方が、今度は映画で描かれるという。  ぼくが最初に木村さんの存在を知ったのは、東邦出版から出た『すべては宇宙の采 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)86 『真夜中の寝台車』

2013-04-20 05:34:20 | 短編小説
   ちょっと怖い話を思い出してしまいました。  もっとも、怖いと思ったのはぼくだけで、他の方にはどうということもないかもしれませんが・・・・。 まあ、怖いか怖くないかは最後にご判断ください。    その出来事があったのは、かれこれ三十年も前のことだったでしょうか。  当時ぼくは伝統ある製薬会社の営業マンをやっていまして、漢方薬の販売先拡張のために関東以北の県をを飛び . . . 本文を読む
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ポエム18 『侘助やい』

2013-04-12 01:58:03 | ポエム
      侘助      茶ァなど嗜む身分じゃねえが 垣根に紛れ咲く一重の椿にゃ気をひかれる 侘助やい  おいらはお前ほどシャイじゃないが 植木職人の親方として 生垣づくりの作法は心得ているよ   お屋敷の仕事を請け負って二十年 垣根の全部が椿じゃつまらねえと言ったんだ シラカシの渋さはいいよ 飽きも来ねえし品もある . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)85 『黒はマジシャン』

2013-04-07 02:59:55 | 短編小説
 恵理子が異変に気付いたのは、停めておいた自転車をマンションの二階の窓から眺めたときだった。 前カゴを覆っている防犯カバーから白いビニールシートがはみ出し、前輪の真下に何やら黒い塊が落ちているのを発見したのだ。 (あら、何かしら?) あわてて階段を下り、マンションの通用口を出てそのまま自転車に向かって歩いて行くと、しだいに事の次第がはっきりしてきた。 午前中に近くのスーパーマーケットで買い物を . . . 本文を読む
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