どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)16 『喋る木炭』

2009-11-27 01:56:27 | 短編小説
     (喋る木炭)       助手席には、首をがっくりと折った男がもたれるように倒れていた。  ドアを開けると、夜気と入れ替えにアルコールの臭いが流れ出た。  足元には、ほとんど空になった角瓶と七輪が置かれていた。  土田刑事は、自分の方に倒れかかる男の肢体を、肩で支えていた。  練炭自殺らしいという通報を受けて駆けつけたのだが、窓に目張りもなく、七輪には練炭でなく木炭が詰 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)15 『雑踏の死角』

2009-11-19 00:01:02 | 短編小説
     (雑踏の死角)       新宿で怖いのは、歌舞伎町だけと思っていた。  多賀子は新宿伊勢丹の南側道路を歩いていて、不審な男と女子高校生らしい少女の二人連れとすれ違い、妙な怖さに襲われた。  (この人たち、どんな関係なんだろう?)  男に肩を押えられて通り過ぎる少女の顔を、ちらりと盗み見た。  近頃は、大人に際どい行為をさせたり、平気で売春したりする女子高生もいるという . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)14 『ノラの現住所』

2009-11-12 06:11:03 | 短編小説
     (ノラの現住所)        朋子の家の近くに小さな公園がある。  片隅に地域の集会所があり、適度な間隔で配置されたハナミズキや百日紅、ムクゲの樹などが、折々の季節に花を咲かせた。  入口には、自転車乗り入れ、ボール遊び、ゴルフの素振りなどを禁じる注意書きが掲げられている。  看板には載っていないが、公園を囲むフェンスに「猫に餌をやらないでください」との木札が下げられてい . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)13 『発砲危険』

2009-11-04 03:20:02 | 短編小説
     (発砲危険)       ニューヨークでの生活に疲れた星野洋子は、三年ぶりに成田空港に降り立った。  かれこれ十年になろうかというアメリカ暮らしの中で、三度目の帰国であった。  ブロンクスで貧乏絵描きと同棲しながら、自身もまたポップアートを制作して企業やメディアに売り込みを図ってきた。  洋子の絵は、日本人の感覚ではなかなか受け入れられない作品だ。  原色の鬩ぎ合いの果 . . . 本文を読む
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