このベンチに腰を下ろすと、自分の居場所に戻ってきたように、ほっとする。目の前には作り付けのテーブルがあり、四枚の板を並べた粗削りの設置物は、雨風に曝されて灰色に変色していた。 木目だけが磨いたように浮き上がり、ほかの部分はわずかだが侵食されている。数馬は、この木の手触りが大好きだ。ベンチに浅く尻をのせて、板に頬を付けるように身を乗り出す。 テーブルの幅は、彼の左右の腕を伸ばしても三十センチは余る . . . 本文を読む
秋から冬へと、季節が泳ぐように空を渡っていく時期だから、家々の花木もひっそりと屋敷に納まって、なりを潜めている。 山茶花が咲くには、もう少しの冷え込みが必要だし、数馬の好きな太郎冠者の蕾も、まだ小さく固いままだった。 道すがら目にする時季遅れのサルビアには、風情というものがまるで感じられなくて、数馬の癇癪を誘発しそうになっていた。「こんなものを、人さまが通る公道沿いに植えおって・・」 恥知らずめ . . . 本文を読む
猫が消えたあたりを目で追いながら、数馬は声を掛け損なったことに心残りを感じている。 そして、半年も前に妻が発した言葉が、残響のように耳の奥で振動するのを聞いていた。「あなた、あの黒猫を可愛がったりしないでくださいね」「別に悪そうな猫じゃないだろう・・」 そのとき数馬は反論したが、たちまち淑子にねじ伏せられた。「そう思わせるのが上手なの。一度でも気を許したら大変よ。どんどん家の中に入ってきて、蚤や . . . 本文を読む
まもなく十二月に入ろうというのに、日中は汗ばむほどの好天気だった。 井原数馬は、タウン誌から依頼された五枚のエッセイを書き終えて、いつものように散歩に出かける準備をはじめた。 二階の書斎を出て部屋着を脱ぎ、隣室の洋服ダンスに吊るしてあるコーディロイのズボンに履き替えた。 上着は、やや濃い目の茶のブレザーで、統一した色調の中にも微妙に変化をつけたコーディネートを彼は気に入っていた。 夕方になれば、 . . . 本文を読む
〇 激オコの シンゾー 心臓に悪かろう?(島田防衛次官を外され晋三が怒る怒る)
〇 いつまでも あると思うな 人事権(安倍内閣時代の権力を夢見て=総理は岸田やで~)
〇 影の総理の つもりが醜態 露呈して(防衛予算倍増を画策・安倍兄弟)
〇 利権の臭いが プンプン臭う 防衛予算(倍増の旗振り役である島田次官交代へ)
〇 ここがチャンスと 軍事路線へ 突っ走る(ロシア・中国の脅威を千載一遇の . . . 本文を読む
筏葛(ブーゲンビリア)
(季節の花300)より
初夏の光は 希望の使者
ほら 筏に乗ってあなたのもとへ
意味ありげな秋波が送られる
ああ あか紫の誘惑よ
イカダカズラのいたずら心だろうか
18世紀にリオデジャネイロで発見された
南米ブラジル原産の情熱的なつる性常緑低木よ
紫 赤 黄 橙 白などの花を携えて
ようこそ日本に来てくださいました
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家庭菜園は、絹さやが終わったあと見るべきものがない。
最後の絹さや
蔓を撤収してみると、昨年のこぼれ種の大葉が一気に勢いを増して要所を占領し始めた。
市場で買うと、5枚パックで100円ぐらいするというので、せっせと利用することにした。
いまのところ柔らかそうなのを摘んでいるが、取っても取っても伸びてくるので、いずれ間に合わなくなる。
オクラ
&nbs . . . 本文を読む
〇 なんだろな この食い物は ナンだろな(いくらか認知度上がったか)
〇 一人来て 二人来て去る 恋敵(三角関係の負け犬)
〇 いちご狩り 乙女がトチル とちおとめ(練乳につけようとして落とした)
〇 お茶飲むと うまみが消えると 無茶をいう(ご馳走の余韻に浸っていたいんだって)
〇 勝新が オシッコちびる 負けず嫌い(東名高速道で後続のクルマに抜かれまいとして休憩せず)
〇 金持ちは . . . 本文を読む
キランソウ
(ウェブ画像)より
聞いて驚くなよ 皆の衆
オイラの異名は医者殺しっていうんだ
まるで凶悪きわまりない殺人犯みたいだろ?
でもさあ ほんとは誉め言葉なんだって
医者いらずとか医者泣かせと同じ意味
それなら納得だが ちょっとキツイよな
ほかに地獄の窯の蓋とも呼ばれている
やっぱり憎まれていそうな不安があるが
いやいやそ . . . 本文を読む
特別急行「にちりん」
ただいま大分から戻りました
報告した自分の声に気づいて目が覚めた
ええーッ? 俺は何処へ行ってたんだ
いったい誰に報告しているんだ・・・・
リタイアして30年も経つのに
ぼくの記憶はしばらく霧の中をさまよった
乳白色に霞んだ森の奥が明るみ初め
そこに暈を伴なった日輪が現れた
暈は虹色に変化し眩しさに目を細める
そうかJR九 . . . 本文を読む
〇 プーチン院政(うわさ) 後白河法皇も 腰抜かす(後継者の名前もチラホラ)
〇 西側を 兵糧攻めで 揺さぶって(世界中を食糧危機に=戦国時代?)
〇 黒海の 封鎖で 穀物積み出せず(ウクライナ産小麦が現在2,500万トン滞留)
〇 日本は ジワジワNATOに 引き込まれ(ロシアの東の隣国ジャパンを意識させ脅威を分散する意図)
〇 悪党が 群がる 持続化(特別)給付金(性善説に基づいてでし . . . 本文を読む
松谷みよ子さんが長年にわたって収集した日本の民話の数々の中から、その一部を紹介させていただいた。
初回では、歴史家色川大吉氏の推薦文「現代の民衆の心意現象を表現」を引用して、松谷みよ子さんの成し遂げた仕事の重要性に注目したが、実は他に二名の方が推薦の辞を寄稿しているので、末尾で劇作家木下順二氏の推薦文も引用して『現代民話考』12巻(立風書房刊)の拾い読みの〆としたい。
まずは<河童考>の続きで . . . 本文を読む
<河童考>つづき
公害を教えてくれた河童の話が続いたが、今度は「河童のお礼」という話を紹介する。
①茨城県鹿島郡諏訪村安房(現鉾田町)の話
<明治二十年ごろのこと、どじょう取りの祖父は蝮(マムシ)に噛まれた時の用意にと毒消しを持って田んぼに出ていた。さっぱりどじょうが取れなくなったのでやめようかと思って畔を歩いていると、のたうちまわっている河童に出会った、蝮に噛まれたから助けてくれと手を合わ . . . 本文を読む
なんだか 今年は遅くないか
五月半ばに やっと実をつけたキウイに
おそるおそる 話しかける
冬の冬眠期に 枯れ枝のほかに
伸びかけていた蔓を 剪定してしまった
あれはまずかったなと 臍をかんだ
だってさあ きみが領地の外にまで手を伸ばし
ゆらゆらと揺れているのが 気になったのだ
気持ちよさそうで 羨ましいほど自由だったから
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