夕刊の配達が終わって、バイクの手入れが済むと、気になっていた三面記事を探した。
<測量士の男が強盗未遂>
短い記事の中に、佐藤某の実名が印刷されていた。
谷田部テスト・コースの現場でスタッフを担いでいた佐藤の名も、記事のものと同じだった。
(まさか・・・・)
胸さわぎがした。
測量士という特異な職業と姓名の二つとも合致する男は、雄太の知っている限りあの男しかいない。
ただ事件現 . . . 本文を読む
一瞬、目の前が揺れた。
捕らえていたビル群の映像が跳ね、暗い雨空が踊った。
「危ないじゃないですか!」
雄太は怒鳴り返した。積み重なった不満が火のように噴出した。
「おまえ、身分もわきまえずに女なんかといちゃついているから、ボーっとして間違えたんだろう」
侮蔑的な言葉が覆いかぶさってきた。罵られたことより、神山に知られていたことの方がショックだった。
そうなれば当然、田代も知ってい . . . 本文を読む
雄太は、田代所長の外出記録を日報に記入してから、自分の仮事務所にクルマをまわした。
時間が中途半端だったせいか、事務所の中はがらんとしていた。
セスナ機不時着か?
すぐにも顛末を知りたいのだが、近くには誰もいない。雄太はテスト・コース内に入り込んで、直線走路際で唸りをあげるミキサー車と数人の作業員に近づいた。
「すみませーん、あのォ飛行機ここへ降りたんですかァ」
「・・・・なに?」
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