どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

テスト・コースの青春(7)

2009-04-28 01:56:45 | 連載小説
 夕刊の配達が終わって、バイクの手入れが済むと、気になっていた三面記事を探した。  <測量士の男が強盗未遂>  短い記事の中に、佐藤某の実名が印刷されていた。  谷田部テスト・コースの現場でスタッフを担いでいた佐藤の名も、記事のものと同じだった。 (まさか・・・・)  胸さわぎがした。  測量士という特異な職業と姓名の二つとも合致する男は、雄太の知っている限りあの男しかいない。  ただ事件現 . . . 本文を読む
コメント (2)

テスト・コースの青春(6)

2009-04-21 00:40:08 | 連載小説
 一瞬、目の前が揺れた。  捕らえていたビル群の映像が跳ね、暗い雨空が踊った。 「危ないじゃないですか!」  雄太は怒鳴り返した。積み重なった不満が火のように噴出した。 「おまえ、身分もわきまえずに女なんかといちゃついているから、ボーっとして間違えたんだろう」  侮蔑的な言葉が覆いかぶさってきた。罵られたことより、神山に知られていたことの方がショックだった。  そうなれば当然、田代も知ってい . . . 本文を読む
コメント (2)

テスト・コースの青春(5)

2009-04-05 10:48:24 | 連載小説
 雄太は、田代所長の外出記録を日報に記入してから、自分の仮事務所にクルマをまわした。  時間が中途半端だったせいか、事務所の中はがらんとしていた。  セスナ機不時着か?  すぐにも顛末を知りたいのだが、近くには誰もいない。雄太はテスト・コース内に入り込んで、直線走路際で唸りをあげるミキサー車と数人の作業員に近づいた。 「すみませーん、あのォ飛行機ここへ降りたんですかァ」 「・・・・なに?」 . . . 本文を読む
コメント