じゃがいもの花
(城跡ほっつき歩記)より
わしはなあ ケーリンが好きなんや
ニッカボッカを穿いた老人が 右左を見回しながら訴える
わかった わかった
両側から老人の腕を取る刑事が 宥めるように言う
だけどなあオッチャン 他人様の車券代を騙し取っちゃあ
好きとか嫌いとかの話じゃないよ
宇宙人のように宙吊りにされた . . . 本文を読む
カンパニュラ(釣鐘草)
(城跡ほっつき歩記)より
もしもし カンパニュラさん
あなたはどこからやって来たの
茉莉はねえ きっとピンクのお星様から
ふわふわと飛んできたんじゃないかと思っているの
おーい そこのお嬢ちゃん
あんまり ぼくの耳元で叫ばないで
耳の奥が かゆくてかゆくて
ぶるぶると身 . . . 本文を読む
『劇画 J・F・ケネディ』(栄光と悲劇) 旭丘光志の名作劇画いま再び
<不死鳥のように蘇えるケネディの魂>
われわれは43歳の若さで第35代アメリカ合衆国大統領に就任したJ・Fケネディについて、どれほどのことを知っているだろうか。
自分を例に挙げれば、主に三つの出 . . . 本文を読む
漆畑は、朝からそわそわしていた。
多歌子が出勤する前に、入口の自動ドアの具合を確かめたり、靴拭きマットの位置を直したり落ち着かなかった。
表に出てみると、太陽は東から南に回ろうとしていた。
御代田の街も、上信越道が走るあたりも、光のさざ波に覆われていた。
近頃はますます家並が増えて浅間の裾野を遮っていたが、追分から道の駅「雷電」にかけて続く樹林の帯が、そこから上の . . . 本文を読む