どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)45 『愉快犯』

2011-02-23 01:29:03 | 短編小説
     (愉快犯) 鬼押出しの溶岩の間から、切断された肢が突き出しているとの通報があった。 急行したパトカーの警官が見たのは、真っ白い二本のマネキンの足だった。 遠目だと、生身の女の死体に見えなくもない。 バラバラにされた遺体と見間違えて通報した男を、責めるわけにもいかない状況であった。 もっとも、その場に通報者はいなかった。 携帯電話を使ったらしいが、受信記録からは持主を特定できなかった。 だ . . . 本文を読む
コメント (6)

むかしの詩集とフォト日記(17) 「喪失」

2011-02-16 00:00:02 | ポエム
      街角      「喪失」   コマ通りを歩いていたら   人が落ちていた   ヤジ馬も僕も   ばかな奴だと思った   高いビルがあって   夕暮れの空があって   だからといって落ちることもあるまいに   だが少しも心が騒がないのはなぜだろう   幼い日には   僕も拡大鏡を持っていた   小さな出来事によく驚いたものだ   いつ . . . 本文を読む
コメント (4)

むかしの詩集とフォト日記(16) 「負の序列」

2011-02-09 00:00:00 | ポエム
     尺取り虫      「負の序列」   ちぢみのステテコから   植物的な発芽をしました   蒸し暑いので   ひょろりと顔を出しました   でも誰ひとりぼくに気づいてくれません   ジャワ帰りの元小隊長がいます   満州引揚者がとなりに坐っています   学徒兵だった男もいます   そして   うら若いわがご主人がいます    四つの世代の使者は   . . . 本文を読む
コメント (2)

むかしの詩集とフォト日記(15) 「愛の形象」

2011-02-04 22:09:19 | ポエム
    花と蝶      「愛の形象」   宿場だった街の   塀を接した細い路地の   そこだけ押しつめたような濃い闇の中で   男が涙をこぼしたとしたら   挫折する主義もなく   失うような恋もなく   素手のまま   男が涙をこぼしたとしたら   地中深く   雲母に似た愛が生まれている . . . 本文を読む
コメント (2)