『落石注意』の怪
国道145号を起点の羽根尾から吾妻渓谷方面に向かうと、切り立った崖が次々と現れなんとなく不安な気持ちに捕らわれる。
垂直に近く見えるのは気のせいかもしれないが、コンクリートを吹き付けたり金網を張って落石を防御している様子は、あまり気持ちの好いものではない。
大雨の後、日本各地で崖崩れや落石による被害が報道されるが、今夏は吾妻鉄道ですら土砂崩れによって運行を . . . 本文を読む
蝉と過ごす夏(4)
「ついに目撃してしまいました。火曜サスペンス劇場を・・・・」
ちょっと興奮気味に話し始めたのは、このところ畑づくりに精を出している一人の男。
被害者は<セミ>嬢。
犯人は、<スズメバチ>男。
以下、目撃者の証言をそのまま載せる。
「はい、わたしが野外で高校野球の実況中継を聞いていましたところ、数メートル離れた路上で急にバタバタと騒がしい音が聴こえま . . . 本文を読む
蝉と過ごす夏(3)
蝉くんがついに物干しの横木に取り付きました。
「山頂だ!」と思ったかどうか。
飛ばずに登りきった彼の状態が、この世にお目見えした危うさを秘めていませんか。
これからの一日一日が栄光の日々になるか、あっけない死との対面になるか。誰にも分かりません。
「やれやれ」
一息ついたあと、どこかへ飛び立ちました。
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蝉と過ごす夏(2)
このところ蝉の往来が激しい。
朝、庭の地面を這っていたり、テーブルや椅子に掴まっていたりする。
この日は物干しの柱にとまり、その後ひたすら上を目指して登り続け、ついに横木に取り付くことになる。
<長谷川の舞い>になぞらえるのは無理かもしれないけど、つい連想してしまうんだよね。
有名な登山家で岩登りの名人だったが、雪崩に遭って四十三歳で亡くなった長谷 . . . 本文を読む
蝉と過ごす夏(1)
前回の『ムシヒキアブと青虫』の写真は、まだうまく取り込めていませんが、前々回の『蝉の恩返し』で触れた生まれたての蝉を掲載します。
どちらもズームで撮ったもので、片方ができてもう一方ができないなんて恥をさらすようですが、ともかく(知恵熱おやじ)さんの懇切丁寧なご指導をいただいて誕生したての蝉を投稿できて喜んでいます。
蝉の姿が透けすけで見えづらいかも。
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黒と緑のエチュード
たぶんムシヒキアブの一種だと思う。
八月の白昼堂々青虫を引きずっている黒装束の忍者は・・・・。
庭の端から端まで約三メートル、自分の体の二倍半はある獲物をものすごい速さで運んでいくのだ。
観察しようと近づくと、一瞬のうちに飛び立ち姿を消した。
これは失礼しましたと離れると、一呼吸おいたばかりでもう舞い戻っている。
その間、青虫はだらりと身を伸ばし . . . 本文を読む
陣内眼科医院の待合室は、花粉症で悩む患者で溢れかえっていた。 毎年この時期になると患者が増えるのは仕方がないのだが、院長の陣内はいつにも増してあからさまな仏頂面を崩さなかった。 診療報酬が伸びるからといって単純に喜ぶ男ではないから、そのこと自体は理解できないことではなかった。 しかし、看護師の玉枝に命じて待合室のレザー張り長椅子をエタノールで拭かせる行為は、陣内が実は患者の増加を内心怖れて . . . 本文を読む