どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

吉村くんの出来事 (第五話)

2007-01-31 04:45:40 | 連載小説
      日々是好日  マリオン・クロックの前は、人ごみでごった返していた。  有楽町駅から流れてくるJR利用客と、真近の地下鉄銀座駅から湧き出てくる乗客が一緒になって広場にあふれていた。  久美はこの場所なら待ち合わせに最適と考えたのだろうが、吉村は人出の多さに不安を感じていた。  待ち合わせ時刻の十一時までに、久美の姿を見つけることができるだろうか。  吉村は車道と歩道を隔てる金属フェ . . . 本文を読む
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吉村くんの出来事 (第四話)

2007-01-24 03:39:31 | 連載小説
     逃げる  朝から霙もようの天候になっていた。  ここ数年暖冬が続いていて今年も例外ではなかったが、ときおり寒い日がやってきて人々をあわてさせた。  吉村は朝一番の速達を配達し終えて、次の便に備えていた。濡れた合羽は腰高の丸椅子にかけてある。室内の暖房によって少しずつ乾きはじめていたが、床に滴った雫がその染みを拡げていた。  窓外に目を転じると、近くを通る首都高速道路の入口がスキーの . . . 本文を読む
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吉村くんの出来事 (第三話)

2007-01-18 00:00:00 | 連載小説
     舟艇暮色  十月のある一日、吉村は休みをどのように過ごそうかと迷ったあげく、スポーツ新聞に載っていたレース・ガイドに誘われて多摩川競艇に出かけることにした。  山男の彼とギャンブルの間に、親和するものがあるようには思えなかった。しかし相性はともかく、彼自身は遥か以前から賭け事に惹かれる自分の性質に気付いていた。 「おれだって、破れたり崩れたりすることはあるよ・・・・」  金銭だけの . . . 本文を読む
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吉村くんの出来事 (第二話)

2007-01-12 09:02:53 | 連載小説
     紫陽花  郵便配達中の職員が犬に咬まれたというので、集配課は大騒ぎになっていた。  広いフロアの窓に面した課長席を取り巻いて、三人の男たちが声高に話し合っている。真ん中で受話器に向かって頭を下げているのは、定年間近の課長である。断片的に聴こえるやり取りから察すると、総務課長の指示を仰いでいるらしかった。  吉村はその日二度目の速達を配達して、ちょうど戻ったところだった。次の便まで若 . . . 本文を読む
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吉村くんの出来事 (第一話)

2007-01-08 07:19:44 | 連載小説
 <注> かつて、同人誌で中断したままだった作品を、手直ししながら先を目指したいと思います。十話程度を予定しています。 . . . 本文を読む
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牙(キバ)

2007-01-03 12:57:36 | 短編小説
あけまして、おめでとうございます。  今年も穏やかに新年を迎えられたことと、お慶び申し上げます。  当ブログも丸一年を経過し、さらにいろいろな試みをしたいと思っています。  今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。   2007年 元旦 . . . 本文を読む
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