富津岬
「するめ」
するめを食うかクチャクチャ噛めばよわい日差しの味がするするめ
ムシロの上でひっくりかえし表ひっくりかえし裏くりかえし、海が
揺れていた目玉はどこか砂のなかにでも転がり落ち抗議のくちばし
も簡単にひんまげられた。するめきのうは青空に励まされきょうは
腹ばいでもうおしっこも出なくなった。自分でわかるかどっちが背中
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(辺見庸の新作詩篇より)
5月7日発行の『文学界』6月号に、辺見庸の詩篇『眼の海――わたしの死者たちに』が掲載されていることは、前々回のコラムでお伝えしたとおりである。
実は、北日本新聞への<震災緊急特別寄稿>「日常の崩壊と新たな未来―非情無比にして荘厳なもの」をフットチーネさんのブログから転載させていただく際、『文学界』への詩篇発表のことも知った。
ブログ『炎の水と天 . . . 本文を読む
『草津・六合をつなぐ花の道』
二週間ぶりに訪れた山小屋は、今度こそほんとうの春の気配に満ちていた。
移植して4年、やっと花をつけ始めたソメイヨシノと枝垂れ桜は、数日前の雨でおおかた散ってしまったが、桃の花がいまを盛りと咲き誇っていた。
加えてレンギョウ、水仙、芝桜、レンゲツツジ、ボケ、山吹が時期を同じくして咲いている。
ふと目を上げると、薄緑色の新芽も日 . . . 本文を読む
「辺見庸の発する照射線」
以前から、この作家の発する言葉には尋常でない力があった。
その時々の政治、文化、メディアに対する研ぎすまされた発言は際立っていた。
『もの食う人びと』『目の探索』『自分自身への審問』『永遠の不服従のために』ほか、多くの著作にそれらの記録がまとめられている。
ぼくが最初に辺見庸の名を知ったのは、『自動起床装置』が文学界に発表され、芥川賞を受賞し . . . 本文を読む