どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)80 『自販機に敬礼』

2012-10-29 01:07:18 | 短編小説
     (自販機に敬礼)  大正時代から酒屋をやってきた升喜屋の前を、養護施設の生徒たちが毎朝通って行く。 五十メートルほど離れた通りの先に、パン工場を兼ねた養護施設があるのだ。 幸恵は毎朝九時に、宅配便の取扱いを知らせる立て看板を出す。 店先にはかなり広いスペースがあって、酒類をはじめお茶やコーラなどを扱う自動販売機が三台並んでいる。 店内にも商品は置いてあるが、通りがかりの客はほとんど自動 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)79 『蝶の見た夢』

2012-10-25 03:39:25 | 短編小説
     (蝶の見た夢)  サナエちゃんは、いま「リコン」の危機におちいっていた。 学校から帰ってきて、ドアをあけたとたんに、パパがママをなぐるのを見てしまったのだ。「あなた、わたしをなぐったわね。わたしやサナエには絶対に手をあげないって約束したのに、ウソついたのね・・・・」 ママはひざを突いたまま、下からパパをにらんだ。 そしてくるりと振りかえり、サナエちゃんを抱きしめた。「だいじょうぶよ。心 . . . 本文を読む
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どうぶつ・ティータイム(153) 『ラジオ深夜便で作家・宮本輝の語ったこと』

2012-10-21 02:19:38 | コラム
     『ラジオ深夜便で作家・宮本輝の語ったこと』  10月16,17の両日、宮本輝氏へのインタヴューをNHKラジオ深夜便で聞いた。  * 〔明日へのことば〕 創作の源泉を語る 小説家 宮本 輝  なんでも『水のかたち』という上下2巻の長編小説が刊行されたとのことで、タイミングとしても時誼を得た企画だったと思う。  話によれば、終戦時10名弱の日本人が北朝鮮からの脱出を図り、 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)78 『夢のゆくえ』

2012-10-16 00:24:55 | 短編小説
     (夢のゆくえ)  翔太はその夜ふしぎな夢をみた。 夢の中で、彼は二階の子供部屋の窓辺に立っていた。 丘の上の二階家だから、下を走る国道からは三階建て以上に見える。 その部屋の大きなガラス窓に手を当てて、翔太は青黒くひろがる海をみつめていた。 堤防の向こうは片瀬海岸だ。 丘の上から見下ろす浜辺を、静かな時間が流れていた。 夢とわかっているのに、翔太を包む空気の感触はやわらかかった。 普段 . . . 本文を読む
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ポエム07 『水引によせて』

2012-10-11 00:02:02 | ポエム
      ミズヒキ    秋の日の 控えめな挨拶を交わし長生きしてねと 別れを告げた なんだか 不器用な労わりのようだが救命ヘリの お世話になった人だからあながち 的外れではないと思うのだけっして 予断を持って言ったわけではない秋に別れを告げて 都会に引き上げる切り替えの 時期だったから 高原にとどまる 老人のすぼめた肩が気になり来年また会えることを 望んだのだ手を振 . . . 本文を読む
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(超短編シリーズ)77 『人生とんぼ玉』

2012-10-06 04:08:34 | 連載小説
      (人生とんぼ玉) 大蔵さと子が工房を辞めたのは、秋が本格化した九月下旬のことだった。 ヨシキにとっては、先輩でもあり憧れの女性でもあった。 ガラスの扱い方を丁寧に教えてくれただけでなく、仕事を超えて近しい存在になっていた。 ヨシキが所属する工房では、主にアクセサリーに関する素材や技法を研究している。 顧客のニーズを掘り起こして、さまざまな装飾品にトライする試作室みたいなものだった。 経 . . . 本文を読む
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