4月になりました。おひさまがぽかぽかと照る暖かい春になると、巡礼の旅などに出られたらいいですねえ。さてジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』は、そんな楽しい旅にまつわるお話です。
時は14世紀の英国、暗く長い冬が終わって春が訪れると、どの州のはてからも、多くの人々がカンタベリー寺院への巡礼を思い立ち、聖トマスの参詣に出かけました。日本で言えば、銭形の親分もお休みをもらって出かけたという「お伊勢参り」のようなものです。のんびりと何週間も歩いて旅ができたら、こんな贅沢はないかもしれませんね。
さてロンドンのとある旅籠に、29人もの人々が集まっていました。みんなカンタベリー詣でに行く旅人でした。そこで気のきいた宿屋の主人が面白い提案をしたのです。これから長い旅路を共にするわけですから、道中で全員がむかし起った事件の話をする。そのなかで一番面白い話をしたものが、帰りにこの宿屋に戻ったときに、全員からご馳走してもらうという企画でした。団長で審判はその亭主。
みなが喜んでその提案に賛成しました。そこにいたのは従者を連れた騎士、お祈りの歌がうまいおしゃれな尼さん、狩りの好きな修道院僧、陽気な遊び人の托鉢僧、貧相なオクスフォードの学生、やり手の法律家、金持ちの地主、帽子屋・機織・染物屋に家具商といった様々な職業の連中や、それについてきた料理人、恐そうな船長、占星術を使う医学博士、5人の男と結婚した経験のあるおかみさん、貧しい牧師、農夫、刑事、大工、貿易商人など、わくわくするような豪華メンバーがそろっていたのです。
さて長い長いこのお話から、次回は「粉屋の話」をご紹介しませう。