続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

ショート・ストーリー/B。

2014-01-10 07:02:01 | 日常
 Bは工場長の長男である。弟は大学の講師、妹は某交響楽団員に嫁いでいる。
「Bにもう少し才覚があったらなぁ」と、父親である工場長は嘆く。Bは頭のほうは少し足りないが、いつもニコニコして従順である。

 Bは前妻の息子で、弟や妹は後妻の子供であるゆえに正確も度量もまるで違い、欲というものが無い。
「大学の講師って言ったって薄給で無心ばかりだし、一流の楽団員というのはどうも付き合いに金がかかるらしくて、毎月相当な金額を送金してやっているんだ。Bだけだよ、金のかからないのは・・・」と、父は嘆く。

 小さな町工場の工員たちは工場の壁沿いに座り込んで冬なら日向ぼっこ、夏なら日陰で涼むといった具合。Bも並んで仲間たちと駄弁っていたら、隣接した工場の仲間が自分たちの休憩室に誘ってくれた。冷暖房の立派な部屋もさることながら、そのとき出されたお茶の美味さにBはひどく心を打たれた。


 継母はBのその願いを受けて、事務員にお茶のランクを上げてくれるように頼み込んだ。小さい頃から大人しく反抗すらもなく育った前妻の子の願いは何があっても叶えてやりたかった。
 けれど、冷たい返事、断固、ありえない話だと一笑に付されてしまった。
 というのはかつては同僚として、ここで働いていた仲間、彼女の出世は許せない。資産家の工場長夫人が何者ぞ・・・積年の恨みは強固であり、揺るぐことはなかった。


 Bが、その継母を慰めた話は切ない。

『ポラーノの広場』205。

2014-01-10 06:29:50 | 宮沢賢治
「いったい今夜はどういふんですか。」わたしはやっとたづねました。
「いゝや、山猫の野郎来年の選挙のしたくなんですよ。たゞで酒を呑ませるポラーノの広場とはうまく考へたなあ。」


☆魂の野(野原)である。
 燦(きらきら光る)平(平等)也。
 朗(曇りなく明らかな)の雷(神なり)という考えを潜ませて居る。
 死の度(悟りの世界、衆(人々)を呑/とりこむ黄壌(黄泉の国)の講(はなし)である。

『城』1500。

2014-01-10 06:09:16 | カフカ覚書
「それ、ごらんなさい、お内儀さん」と、Kは言った。「わたしに必要なのは、クラムのところへ行く道ではなくて、まず秘書さんのところへ行かなくてはならないじゃありませんか」
「わたしがあなたのためにひらいてあげようとおもったのは、その道なんですよ」と、お内儀は言った。
「クラムにたいするあなたの願いをとりついであげようと、午前ちゅうも申しあげたじゃありませんか。あれは秘書のモームスさんを通じてとりついであげるはずだったんです。

 ごらんなさい/sehen→Seher/予言者。
 ~さん/Frau→frei/自由。
 午前/Vormittag→Vermittler/仲介者。

☆「あなたは自由な言葉の予言者です」と、Kは言った。「わたしに必要なのはクラム(氏族)の所へ行く方法ではなく、禁錮の秘密の大群(大勢の死んだ人たち)の所へ行く方法です」 わたしがあなたのために開放てあげようとしたのはこの方法です」とお内儀(言葉)は言った。クラム(氏族)に対するあなたの願いを提案し仲介してあげようとしたのはその方法なのですよ。あれは秘密の大群(大勢の死んだ人たち)を通じて仲介するはずだったんです。