この感じ・・ポップと一言で片づけられない柔らかい奥行き・存在感がある。
被写体、描かれたものが主張してくる不思議なリズムが静かで透明な空気感を醸し出し、モチーフが画面の背景と一体になり語りだすような非現実的な世界を垣間見せてくれる。
形態と色彩の妙、この歪み・このバランスでなければならないという作家の意思が、作品を決定付けている。色と形の数え切れない組み合わせの中から発言力を持つ輝く一瞬を切り取る、あるいは探求することで作品が立ち上がる。その達成感、矛盾を大いなる肯定に変換させる術、作家の感性である。
選択された色面や線はモチーフの持つ全体像をそぎ落としている。こうあらねばならぬという観念的な通念を無視し、作家自身の《こうあらねばならぬ》という選択に執着している。ある意味、平凡な鑑賞者への挑戦とも受け取れる作品群は、しかし、鑑賞者をやわらかい心地にさせる。
この穏やかな空気は一種の殺気に裏づけされた安らかさなのかもしれない。
精緻な描き込みとは対照的な平板とも思える作風なのに、脆弱とは裏腹な強さがある。いつまでも心に残る風のような優しさは、記憶の中に過ぎる風のニュアンスと換言してもいいかもしれない。
やわらかな作品に、むしろ強靭な精神の在りようを垣間見、見る者をやさしい記憶に誘い出す魔力がある。記憶と言ったけれど、もしかしたら見慣れたモチーフの中の見たことのない幻想の側面に気づかせてくれたのかもしれない。
(特集『広瀬美帆』/横須賀美術館にて)
被写体、描かれたものが主張してくる不思議なリズムが静かで透明な空気感を醸し出し、モチーフが画面の背景と一体になり語りだすような非現実的な世界を垣間見せてくれる。
形態と色彩の妙、この歪み・このバランスでなければならないという作家の意思が、作品を決定付けている。色と形の数え切れない組み合わせの中から発言力を持つ輝く一瞬を切り取る、あるいは探求することで作品が立ち上がる。その達成感、矛盾を大いなる肯定に変換させる術、作家の感性である。
選択された色面や線はモチーフの持つ全体像をそぎ落としている。こうあらねばならぬという観念的な通念を無視し、作家自身の《こうあらねばならぬ》という選択に執着している。ある意味、平凡な鑑賞者への挑戦とも受け取れる作品群は、しかし、鑑賞者をやわらかい心地にさせる。
この穏やかな空気は一種の殺気に裏づけされた安らかさなのかもしれない。
精緻な描き込みとは対照的な平板とも思える作風なのに、脆弱とは裏腹な強さがある。いつまでも心に残る風のような優しさは、記憶の中に過ぎる風のニュアンスと換言してもいいかもしれない。
やわらかな作品に、むしろ強靭な精神の在りようを垣間見、見る者をやさしい記憶に誘い出す魔力がある。記憶と言ったけれど、もしかしたら見慣れたモチーフの中の見たことのない幻想の側面に気づかせてくれたのかもしれない。
(特集『広瀬美帆』/横須賀美術館にて)