何か分からないが、幾層かに重ねられた穴のある物体は、地表面ではないか。
その上にあるものはおそらく建屋。人工物の抽象化であり、それを太い鉄線などで頑丈に固定されている景である。さらに言えば、明らかに重量のあるそれら物体が浮いている景である。
わたし達が居住する地表面(花崗岩・玄武岩)は固いが(リソスフェアー)、その下(超塩基性岩・スピネル構造)は柔らかい(アセノスフェアー)。上昇するマントル、沈み込む海洋プレート、地表面は必ずしも固定されていない。浮いているし動いているという微かな、しかし大きな変動がある。
若林奮は、天体の動き、地球内部の動きの上下の垂直方向を、振動として捉えている。
幾層にも重ねられた地層(水脈)に、どんなに深く固定の力を加えても、下部は浮いている。アセノスフェアー(柔らかい)の上の地表面である。
信じている強固な地表面、その上に加える人智を持った圧力は絶対の固定を約束しない。千年、億年の単位かもしれないが、やがて変移・変形・崩壊の様相を内包している。
《動いている=振動》は小さな現象(飛葉)から無限に伸びる時空へと広がりを見せる。相対的な関係の把握をモデルとして試作している。
《後からの》の意味は、到底目測では知り得ないことを、《先の研究により学習し、知り得た事実を踏まえて》ということだと思う。
(写真は神奈川県立近代美術館/葉山『若林奮 飛葉と振動』展・図録より)