『呪い』青空に浮かぶ雲・・・ただそれきりである。
空を見上げる・・・多くは祈りなど希望につながる行為である。しかし、『呪い」とある。
空に負の要因はあるか。
「災いは天から降ってくる」という、一理あるかもしれない。
空を見上げて呪うとは、どういうことだろう。空の果て、遠い過去へのやるせない思いなのだろうか。
災害は空の彼方に在る太陽と雲の関係にに起因していることが多い。雲のない晴れ間続きの干ばつ(日照り)、雲に覆われた長雨、地球上の照度の差異による風の強度、極寒、極暑・・・。
雲によって引き起こされる災害、水の三態は地球の運命を左右してきたし、不穏を孕む大きな要因である。
負の産物をもたらすものとして恨めしく空を見上げ、雲の動向から目を離せない地上の存在者たち。
現れては消え、消えては現れる予測不可能な雲の行方に心を痛めている。
災害という物理的現象は、人の心に大きな傷を残す。辛酸をなめても運命に従うしか術はない。英知、力の及ばない自然の理である空の雲は、確かに『呪い』という心理的対抗手段を持ってしか怨みを埋めることは出来ない。
神の力も及ばぬ自然の理の根源として、雲の散在する青空を描いたのだと思う。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)