『光の帝国』
日中の空と夜景の合体、白雲の点在する青空(昼)と街灯や室内灯の薄明かりが見える夜景(夜)…時間のズレ、反転の世界の不条理は正しく自然への冒涜であり、絶対に有り得ない現象である。
この絶対的な亀裂は精神界の産物(妄想)以外の何物でもないが、この認識こそが帝国(軍事力を背景とする国家であり、広い領域の民族を支配する国家)への静かなる無言の反旗である。
煙突は強力なエネルギーの象徴であり、夜をも制する灯り(光)を手中に納めている。自然に対抗(対峙)しうる力を有していると思い、人民を支配している帝国。
この半分に分けた光景の差異を見れば明らかであるが、夜の景観はとても光の射す自然(宇宙)に対峙し得るものではない。
けれど、わたしたち民衆は自然の恩恵に浴しながらも、国をも愛している。帝国の一部たりうるわたし自身の否定はあり得ない。
自然と帝国の競合、わたし達はこの狭間の中で生きている、生きなけれなならないという覚悟である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)