(学校で教えてくれない経済学)
「ムバラク辞任、29年の独裁に幕」と2月12日(土)日経夕刊トップの記事の下に、「NY市場で原油相場がバレル85ドルへ反落」と結構大きな見出しで出ていた。100ドル突破は時間の問題だと言われていた。エジプト情勢の緊迫化で「勢い」があった相場がとん挫した結果である。
エジプト情勢について入れ換わり立ち替わり、多くの専門家が、三連休の日本でも、マスコミに登場した。2月13日(日)日経朝刊では「大規模な衝突やスエズ運河閉鎖が回避され、「市場」に安心感が広がっている。」と書いていた。原油相場は「緊迫」すると「上げる」が「安心」すると下げる傾向が強い。
原油相場の上げ下げで商売している人はエジプト情勢が「緊迫」することを喜ぶ。しかし、世界経済全体にとって見れば原油相場の値下がりは「好材料」である。「一次的には、バレル80ドル近辺までは値下がりする」と見る専門家まで出て来た。
日本のガソリンスタンドの看板を見れば、リッター120円台だったのがいつのまにか132円、133円と値上がりしている。ガソリン相場もNY原油相場の値上がりで相場に「勢い」があった。日本人は相場嫌いの人が多いのは、何のことわりもなく相場が上げたり下げたりするからである。日本では極端な人は動くものは嫌いだという人もいる。
日本が消費する原油のほぼ100%は輸入に依存している。輸入の95%はホルムズ海峡を通過するタンカーによって運ばれる。エジプトに新政権が誕生して、「次は我が身」と心配する王様や元首は多いと外電は伝えている。中東情勢全体から見れば必ずしも安心できないから「一次的」という言葉を「枕詞」につけて「警戒感」は完全に解いていない。正解だろう。
原油相場はエジプト情勢の鎮静化で値下がりしたが、商品相場はお構いなしで値上がりしている。トウモロコシ、小麦は史上最高値に迫る「勢い」で値上がりしている。食料品の値上がりで、貧困層の不満が助長され、チユニジアでの一青年の焼身自殺を契機に暴動が過激化してエジプトに波及した。中国の干ばつ、豪州での水害の影響むしろこれから出てくる。「一次的か」「構造的か」この見極めが基本だ。今の日本は目先、目先で物を見る人が増えた。その典型が政治家であろう。
2月13日付けのWSJ紙に「Yes,the Gold Rush is still ON…butHow Long?」という見出しでRussellPealman記者が「まだ上げるかもしれないが、いつまで?」という記事の中で「あくまでヘッジのためならいいだろう」と書いていた。「金相場は、ドル相場に反比例して動いている。だからバーナンキ次第だろう。」という専門家の意見を紹介しているのが面白かった。
原油相場は一時的に休んでいるが「活火山」であることに変わりはない。要警戒だろう。(了)