中国問題スぺッシャリスト、石平氏大いに語る
江嵜企画代表・Ken
中国問題スぺッシャリスト、拓殖大学客員教授、石平氏の講演会が、5月21日(土)午後6時半から大阪福祉会館で開かれ楽しみにして出かけ,開演30分前に到着、いつものように会場の様子をスケッチした。石平(せき・へい)氏は四川省生まれ。漢族系中国人。天安門事件で中国に絶望、2007年末に日本に帰化した。知る人ぞ知る中国通の一人である。開演前に後ろを振り返ったら200人近い人で満席になっていた。
「中国経済の成長率は2010年の10.4%増をピークに年々小刻みに低下していたが、今年2016年は6.7%増と発表した。果たして本当か?そのまま信じているバカはいない。」という言葉で講演は始まった。石平氏はボードに「李克強指数」と大きく書いた。李克強首相が州知事時代から「中国経済の実態を知るためには、①電力消費量と②鉄道の貨物輸送量を見ている」という2つの数字だ。
2015年の中国のGDPは6.9%増だった。2015年の①電力消費量は0.5%増、②鉄道貨物輸送量はマイナス11.9%と発表した。2013年のGDPの伸び率は、電力消費量の伸び率と同じ7.7%と発表していた。2016年1~3月の中国のGDPは前年同期比6.7%増と発表した。ところが突然、①電力消費量と②鉄道貨物輸送量の発表を取りやめた。GDPがウソであることがばれてしまったからだ。
中国政府は先月、人民日報で「権威筋によれば中国経済は昨年に引き続き減速する」と書き中国政府が中国経済の減速を公式に初めて認めた。中国経済を知る指標に輸入がある。その輸入が今年1~3月の輸入が前年同期比14.2%減少した。国内投資が減ったからだ。そのため原材料を輸入する必要性が減った。中国の個人消費はGDPの34%と少ない。アメリカも日本は個人消費が約70%を占めると高い。
もう一つ、中国経済は、GDPの25%を占める輸出が支えてきた。その輸出が5.6% 減少した。中国では、ここ5~6年で特に人件費が高騰、インフレが進んだ。中国製品は安いから売れた。いま安くなくなった。中国人はいまカンボジアなど海外で生産を増やしている。国内統計はごまかすことが出来る。貿易易統計は、ごまかしようがない。個人消費が若干増えても、GDPの半分以上を占める投資が減る。輸出入が減れば、今後、中国のGDPはよくて横ばい、下手すればマイナスになる可能性が出てきた。
もう一つ中国経済がマイナスになる可能性がある理由に習近平と李克強の間に深刻な対立がある。中国政府は対立があっても表向きは見せなかった。ところが今年2月の全人代で李克強が3時間経済報告を行った。並んで座った二人はひとことも言葉を交わさなかった。どこで拍手をするか。大きい拍手は大きな字で拍手と原稿に書く。習近平は一度も拍手しなかった。
もう一つ挙げるとアメリカとうまく行かなくなった。昨年、習近平がアメリカへ行きオバマと蜜月を演出した。オバマは6時間も二人だけの時間を取った。その後次々とオバマは習近平に裏切られた。最近の例ではカメロンと習近平が演出した蜜月関係が、実はそうではなかったことをエリザベス女王が暴露した。
南シナ海問題だけではない。中国とアメリカが急激に悪化してきた。これは新たな問題だ。アメリカを敵に回すと国を亡ぼす。日本もアメリカを敵にしてひどい目に遭った。ロシアもそうだ。アメリカを敵に回すと国が亡びる。最近ではパナマ文書がある。習近平の家族、中国トップ7名のうち3人が関与したことが暴露された。汚職取り締まりに音頭をとっていた習近平にとってまずいことになった。
1時間半の講演を全て書き切れない。講演後5人が質問した。そのうちの一人が台湾の蔡英文政権との今後を聞いた。台湾は一つの中国という表現をしなかった。中国は香港との関係にも困っている。天安門事件の時と時代背景も国民の生活状態も今の中国は変わった。形を変えた民主化は進むかもしれないと石平氏は答えた。
石平氏は、経済成長にはV回復、U回復、L字型と3つある。中国はLの可能性が強い。Lの字が横に長く伸びる可能性がある。横に伸びるのではなく下に向けて落下することも十分ありうると講演を終えた。(了)