大阪湾の魚はおいしいの?
江嵜企画代表・Ken
「大阪湾の魚っておいしいの?」というタイトルにつられて6月27日(水)午後6時半
からはじまる「まちライブラリー@大阪府立大学第55回アカデミックカフェに参加し
た。この日の講師は大阪府立大学大学院教授の大塚耕司氏、海洋環境学の専門家であ
る。
会合はクイズ様式からはじまった。スケッチに紹介した大阪湾と東京湾の一覧表はは
じめブランクだった。大阪湾と東京湾とどちらが広いですか?の質問からはじまっ
た。面積はほぼ同じだった。ほとんどの人が正解だった。大阪湾と東京湾と平均水深
では大阪湾が浅いという点では意見が一致した。平均ではそれほど差がなかった。答
えが分かれたのは最大水深で大阪湾が197M、東京湾が700Mで圧倒的に深い。浅瀬の
面積は大阪湾が少ないと手を挙げたひとがほとんどだったが大阪湾13箇所に対して東
京湾が186と浅瀬の数は圧倒的に多かった。
大阪湾には浅瀬がほとんどない。神戸に80年も住んでいる筆者などは海岸の埋め立
て、埋め立ての歴史を見て育った。白砂青松、きれいな海で魚釣りを楽しんだ。それ
がみるみるヘドロに変わった。そのためもあり、
本日のお題である「大阪湾の魚はおいしいの?」と聞かれても、正直、最初はピンと
こなかった。ところが結論は大阪湾の魚はおいしいのだそうだ。一例として大阪湾の
イワシは一桁違いの値段で東京の料亭へ直行しているという。イワシ以外でも大阪湾
のさわら、タイ、ひらめ、マアジ、すすき、かれいもおいしいと人気で、高く売れて
いると大塚先生は魚の名前を並べた。
クイズ形式はその後も続いた。「大阪湾の漁港の数はいくらありますか?」と聞い
た。(A)10,(B)20,(C)50.正解は(B)の20だった。『漁港と漁業組合の場所はほぼ
おなじである。漁港だけのところもある。漁港は泉州沿岸に10ほどが集中している。
泉南には3つの規模の大きい漁業組合がある。昔から縄張り争いが強い。まだ昔のお
じさんが牛耳っておられるからだが若い世代と先日一杯飲みながら話した。「これか
らの漁業は考えを一緒にして対策を建てないと生き残れない」と話していた』と大塚
先生は話した。
大阪湾の大きな川の河口付近は汚れている。大阪湾に流入する汚染負荷量で見ると第
一は淀川,次に僅差で神崎川が2位、かなり離れて大和川でそれぞれの河口に汚染負荷
地帯がほぼ集中している。魚の生存にとって3悪人は①RedTide(赤潮)、②
GreenTide(青潮)、③ヘドロである。いずれも酸素不足になり魚は生きられない。
カニなどは苦しいから岸壁を登ってくる。下水処理場場などからの排水には炭素、窒
素、リンが含まれているが、窒素とリンは上記三つの川の河口周辺に集中している。
河口を離れると汚染度は急速に下がる。
窒素とリンは汚染元でもあるが魚の栄養源である。大阪湾を明石沖から3つの川の河
口を経て泉州沿岸に沿って潮が南下、栄養源が還流している。ただ、関西空港が出来
たあと流れがせき止められ栄養が不足、泉南沖の漁獲量が減少してきている。年間漁
獲量は、瀬戸内海は、平方KM当たり20トンと群を抜いて多い。チェサピーク湾,北
海が5トン強、バルト海3トン、地中海1トン強となっている。大阪湾は閉鎖された海
域だが潮の流れに乗って栄養源が運ばれている。
「大阪湾の埋め立て工事は一昨年、原則禁止が湾岸府県の条例で決まった。埋め立て
に伴う漁獲量の新たな減少は食い止められる可能性がある。一方、魚の消費量は減少
に歯止めがかかってきている。正確なデータはない。肉の消費が頭打ちになってきた
という現象もみられる。一方、魚を食べる人が徐々に増えているという見方もある。
回転寿司の増加と関係があるかは定かでない。日本列島を囲む海域は世界有数の漁場
である。ノルウエー近海、アフリカのナンビア沖、ペルー、チリー沖とあるが数少な
い。大阪湾の沿岸の環境修復に微力を注ぎたい」と大塚先生は話を終えた。
子供の頃、家の前を「いかなごー、よー」と声が聞こえると祖母が玄関を飛び出して
いった。ほぼ毎日、とれとれの魚を母が食膳に用意してくれた頃が懐かしい。(了)