(スケッチ&コメント)
「里山里海と地域再生」:中村浩二、金沢大学特任教授大いに語る:神戸酒心館「酒蔵道場」講演会
江嵜企画代表・Ken
「里山里海と地域再生」と題して、中村浩二、金沢大学特任教授による講演会が神
戸酒心館「酒蔵道場」で5月9日午後4時から開かれ楽しみにして飛び入り参加し
た。30数名集まった会場の様子をいつものようにスケッチした。
中村教授は、昭和22年(1947)神戸生まれ、県立西宮高校卒と子供のころからなじ
み深い場所で話す機会を頂いたことに感謝したいと冒頭挨拶があった。氏は、京都
大学農学部卒、同大学院で修士号、専門は生態学、昆虫の個体数変動、生物の多様
性、インドネシアでの熱帯の生態学を研究した。金沢大学教授、現在、金沢大学「里
山里海プロジェクト代表」を勤める。
「里山」「里海」とは何か?「日本の里山は農林業の人手により形成された農村の生
態系」、「里海」とは「漁業等の人手により形成され、生産性と生物多様性が高い沿
岸生態系」と定義できるとの説明があった。「里山」と呼ばれる前は「奥山」だっ
た。
水田があり、林があり、山すそに住居が点在する。それが里山。住む人が少なくなり
いのししが出てくる。能登半島にクマが出没するようになった。薪、炭、落ち葉、緑
肥など農家の生活と密着していた。そんな日本の原風景が急激に姿を消している。
里山は国土の40%を占める。石川県ではそれが60~70%と高い。メダカ、ゲンゴロ、ト
ノサマガエル、ホタル、トキ、コウノトリが昔はいた。オミナエシ、フジバカマ、キ
キョウの花が咲いていた。ちょっと前までは農薬を使っていなかった。
里山里海は大規模乱獲により世界的規模で姿を消している。里山の崩壊はグローバ
ル化している。そのため最近では多くの外国人研究者が金沢大学の里山自然学校を訪
れるそうだ。大手商社の三井物産が里山プロジェクトに初期の段階から環境基金を出
し、支援していると聞いた。近い将来里山にビズネスチャンスと見込んだのだろう。
建築家の夫と11年前に東京都から移住してきた「まるやま組」代表の荻野由紀氏は
里山里海の恵みを生かした商品開発に取り組む。漆喰など自然素材を使った家づくり
を手掛けたり、雑穀を加工した「雑穀クッキー」で得た収益金は雑穀の生産者、クッ
キーを焼いた主婦、缶のデザイナーで分け合うと会場で配布された資料にあった。
講演の中で個人の寄付などで里山支援に2,000万、自治体から2,000万の資
金提供があると聞いた。講演の後質問の時間が用意された。「お金の話で心苦しい
が」と前置きして、筆者は4番目に手を上げて「金の切れ目は縁の切れ目。人口が
急激に減少していく。自治体の税収減は目に見えている。そのあたりはどうお考えで
しょうか。」と僭越ながら質問した。
中村教授は「ご指摘のとおりでございます。特に、自治体は里山の重要性について
十分ご認識いただいていない。地道に実績を上げ、物心両面のご支援をいただくよう
努力したい。」と答えられた。収穫の多い講演会に声を掛けていただいた神戸酒心
館、安福幸雄会長にひたすら感謝である。(了)