思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

9条改憲は目くらましー保守主義者の真の狙いは何か?

2005-06-02 | 社会思想

保守主義者は、憲法論議で何を獲得しようとしているのか?
自民党右派の真の狙いを批評家は誰も分かっていないようです。

9条の改憲は目くらましです。
真の狙いは、「天皇制国家―日本」の確立なのです。
彼らは憲法前文の改定によって、実際上1条の象徴天皇規定の内実を強めていこうと考えています。元号の使用を役所に義務づける法律の制定に始まり、明治天皇賛歌の「君が代」を国歌として法制化し(戦前の日本でさえ法制化は見送られました)、さらに学校現場での歌唱の強要、昭和の日の制定、、、、。一連の政策はみなそのための布石です。

欧米とも中国とも異なる日本の国の姿を「天皇制」に求めることで、強いアイデンティティーを確立するのが保守主義者の「夢」なのです。
彼らは、山県有朋の明治政府が作った「国体」イズムを平成版にソフィスティケートして復活させることによって、保守主義の永続化を目論んでいます。女性天皇も形式的な議論の末に容認することで、かえって天皇制を揺ぎないものにしようとしているのです。
9条改憲によってアメリカとの軍事同盟を強化することは、天皇制保守主義の政権を維持するための基盤ですが、9条問題だけに目を奪われているとひどいことになります。

では、なぜそれほどまでに保守主義者は「天皇(制)」に求心力を求めようとするのか?
答えは簡単です。自分自身から出発する「よきもの」を育てつつ生きることのできない外面人間は、即物的な現実主義の醜さとはかなさを糊塗する装置を必要とするからです。保守的権力を安定して維持してゆくためには、宗教儀式を生活の中心に置いている天皇―皇室を利用することが必須なのです。「天皇制」とは占有する権力を聖化するアイテムです。

何も本質が見えない不感症の民主党は、この自民党右派の遠大な戦略に気づいていません。「市民精神」に基づく政治哲学が未確立なために、深いところで彼らに対抗することができないのです。
言うまでもなく、国体思想=明治政府がつくった近代天皇制と民主制=市民自治とは本質的に背反するものです。

こわばった固まじめな心ー厳禁の精神ー国家主義に通じる思想ほど愚かなものはありません。ばかばかしい復古趣味は市民みなの迷惑です。自民党右派の「天皇制ー日本」のおかしな思想には明白に「ノー」の意思を示したいと思います。



「皇族の人権と市民精神の涵養」および「水の国ー日本、よき伝統を破壊したのは誰ですか?」をご参照下さい。

明治政府が破壊した日本本来の伝統については、「感性としての日本」(北沢 方邦著 2002年11月 藤原書店 \2600(2730円税込)をお読み下さい。




6.1 武田康弘


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