思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

【女の子は奴隷を産む機械】 田村隆一作 『恋歌』

2007-02-03 | 社会思想

今朝の東京新聞(26面)に、戦後を代表する人間愛の詩人であり、日本最高の詩人とも評される田村隆一さん(1923-1998)の『恋歌』が紹介されています。
戦前の日本政府(近代天皇制国家)により兵隊という「機械」にされた田村隆一さんは、現代社会の人間蔑視の構造を鋭く抉る作品を書き続けました。
『恋歌』では、【女の子は奴隷を生む機械】という表現で、人を人とはみなさない「エリート」支配の人間機械化社会を痛烈に批判しています。以下に全文を書き写します。


『恋歌』

男奴隷の歌

恋をしようと思ったって
ひまがない
手紙を書くにも字を知らない
愛をささやく電話もない
それでも赤ん坊が生まれるから
不思議な話
男の子は奴隷の奴隷
女の子は奴隷を生む機械
それでも恋がしてみたい
それでも愛をささやきたい
言葉なんて無用のもの
目と目で
生命が誕生するだけさ

女奴隷の歌

わたしは機械を産めばいい
いつのまにか
お腹が大きくなって
満月の夜に
わたしは機械を産むの
男の子だったら機械の機械
女の子だったら機械を産む小さな機械
仔馬の赤ちゃんだったら
生まれたとたんにトコトコ走って行くけれど
人の子って
ほんとに世話がかかる
ヨチヨチ歩きまで三百日
機械になってくれるのが三千日
奴隷になるのに六千日
愛って
ほんとに時間がかかるもの
それでもお腹だけはアッというまに大きくなるわ

コーラス

奴隷には
涙も笑いもいらない
働いて働いて
ただ眠るだけ
鳥や獣や虫がうらやましい
遊んでばかりいて
たっぷり眠り
たっぷり恋をして
そのくせ
機械を産まないんだもの
そのくせ
機械を産まないんだから

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自由、はつらつ、伸び伸び、
断固として、思いきり、これでいい、
ふかぶかと、豊かに、大きく、
自分性を貫く、ためらわずに、私は私。
このように悦びと共に生きるのが、奴隷でなく、人間。

奴隷男の子どもを産む奴隷女が、生んだ子を奴隷として育てる。一元的な価値観を仕込み、既成秩序の奴隷にするのが仕事。こういう生は生きるに値しない。

武田康弘





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