思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

チョムスキーとメディア

2007-03-08 | 社会思想

以下は白樺MLです。

----- Original Message -----
From: 白樺教育館ー武田康弘
To: shira_philosophy@freeml.com
Sent: Wednesday, March 07, 2007 8:35 PM
Subject: [shira_philosophy:1505] チョムスキー

武田です。

「チョムスキーとメディア」、見てきました。
午後2時5分開始で終わりは5時。
チョムスキーの語る思想は、白樺哲学と大変似ていました(笑)。
彼は21世紀のサルトルという感じです。ただし、平明で明るく、シェイプアップされたサルトルですが。冷静・沈着・内省的でかつ能動的・情熱的です。
チョムスキーは、たえず自由と民主主義の原理をとらえ返し、「ふつう」の人々の生に大きな価値を見、そこに希望があると語ります。本に書かれなかった人々こそが歴史・社会の真の主役である、という信念をもっています。現代社会の「エリートと専門家による支配」を覆すための思想・政治の闘いーアメリカ社会におけるエリート支配を打破し、ふつうの市民が主役になる「民主主義」革命を実現するために精力的に動く姿は実に感動的です。

以下は、チョムスキーからのメッセージ。
「政府・メディアが人々をお互いから引き離し、孤立させようとするなら、
私たちは、その逆をいきましょう。
つながるのです。
各々の地域社会にオルタナティブな行動の拠り所が必要です。
他者との連帯のなかで、
自分自身の価値観を身につけ、
知的自衛の手段を学び、
自分の生活に主導権を取り戻し、
そして周囲の人々にも手をさしのべるのです。」

渋谷のユーロスペース(2)ー140名の定員のところ45名くらいでしたので、ゆっくり見られて疲れませんでした。数名のお年寄り、数名の若者、後は中年。男女は半々くらいでした。
チョムスキーの明晰で力・張りのある声、透明な思想と不退転の行動は、視聴していて生理的にも気持ちがよく、元気が湧き出ました。
なにしろ、彼の主張は白樺哲学と合わせ鏡のようで、哲学の初心=民知そのものなのです。
―――――――――――――――――
----- Original Message -----
From: 白樺教育館ー武田康弘
To: shira_philosophy@freeml.com
Sent: Thursday, March 08, 2007 12:14 PM
Subject: [shira_philosophy:1506] Re: チョムスキー続き

昨晩の続きです。

ユダヤ系のアメリカ人であるチョムスキーは、デューイ(プラグマティズムの哲学者で、自由と個性と社会性を重んじ、抑圧や権力の介入を排した教育の提唱と実践で知られる―戦後の日本の教育にも大きな影響を与えた)の考えによる自由な学校で学びましたが、そこには「競争」がなく、「優等生」という概念さえ存在しなかった、と言っています。
受験勉強は嫌いで、さまざまな現実を見、触れて育ったということです。こういうところが「言語学のアインシュタイン」との評価を呼び寄せる要因かもしれません。
それにしても、すでに世界的な言語学者(言語の動的分析=生成変換文法や本能としての人間言語説)であった彼が大学教授としての生活を奪われることも覚悟して、アメリカ社会の不正に対して敢然と立ち上がり、「ニューヨークタイムス」をはじめとする大メディアの構造的問題―それらはエリート・支配層に都合の良い「思想注入」の役目を果たすにすぎないーことを、個人が良心に基づいて活動する小メディアと連携しながら追求する姿勢、その迫力・美しさには圧倒されました。「ニューヨークタイムス」がエリート支配のための思想注入新聞であるとの指摘(多くの具体的事実・とくに東ティモールの大量虐殺事件をあげての追求)に対して、論説委員・カール・マイヤーが次第にシドロモドロになっていくさまはなんとも愉快!痛快!
また、現代思想のチャンピョンと言われたフランスのミシェル・フーコーとの対談でも、チョムスキーの明晰さが際立っていました。「抑圧規則の体系があってこそ科学も可能」とうフーコーのギクシャクした語りとは好対照。
また、なにより素晴らしいのは、若者・学生たちのインタビューや質問へのウエット・ユーモアに富んだ、真摯で謙虚な態度です。著名人であることを嫌い、なんの野心も持たない彼は、アメリカの良心ではなく、人間の良心そのもの。

「プロパガンダ・モデル」と名づけられたメディア分析のチョムスキーとハーマンとの共著『マニュファクチャリング・コンセント(合意の捏造)』(マスメディアの政治経済学)は、先月(2007年2月)に翻訳本が出ました。トランスビュー刊・(1)3800円、(2)3200円で高価ですが、教育館で購入しようと思います。

☆ドキュメンタリ映画「チョムスキーとメディア」は、渋谷ユーロスペースで、3月16日(金)までです(一日3回上映)。お問い合わせは、03-3461-0211(ユーロスペース)

武田康弘。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする