思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

わたしの生と仕事を支える哲学

2007-09-06 | 恋知(哲学)

以下に、わたしの生と仕事を支える哲学の芯を簡潔に記してみます。

わたしは、ものごとをよく「知る」のに何よりも大切なのは、言語による整理や概念化以前の【感じられ思われる世界】だと思っています。「私」の心身にどのように感じられるか?どんな感じがするか?その【体験=直観】を抜きに言語を用いたのでは、「死んだ言葉」にしかなりませんから。概念主義による死んだ言語=感じられ思われる世界の言葉を下に見るような歪んだ言語主義(「学」を職業にする人にしばしば見られる)に囚われていては、自分で考えること=恋知は始まりようがありません。この「言語中心主義」と、それと符合する問題でもある様式・型が優先する従来の日本文化―「様式による意識の支配」を変えていくことは、自分が真に自分として生きる(恋知の生)ための不可避の作業だ、わたしはそう確信しているわけです。
言い換えれば、よく見、聴くこと・よく触れ、味わうことがものごとを知るための絶対の基盤であることの深い自覚です。五感をフルに用いて全身で直截知ろう=心身全体で会得しようとする構えです。言葉で誤魔化(ごまか)さない、概念化して分かった気にならない、理論に逃げないことが何より大事だとわたしは思っています。
写真家の土門拳が言った通り「たとえ一本の松の木を撮るにも、ただ概念として「松」を見ていたのでは、いくら構図的にまとまった写真でも【生きた松の木】にはならない。知るとは、まずギョロリと睨み、それがどのように生えているかをよく見て、松の木を心中に深く感じ知ることだ。ただ知識として概念的に知っているだけでは、知ったことにはならず、それでは松の木一本といえども撮れないのだ」(要約・文責は武田)というわけです。
感じ知る世界→広大無限のイメージの世界を開拓していくことが、言語による思考とコミュニケーションを生きた価値あるものとするための基本条件だ、わたしはそう考えています。認識論の原理中の原理は【直観=体験】である、それがわたしの哲学の前提=基盤です(また、実存論の原理中の原理は【欲望】であると思っていますが、それについては後で書きます)。

以上簡潔に記したわたしの哲学は、「白樺教育館」に通う父母の方にお示ししている『心身全体による愛』という子育て・教育論と符合していますので、以下に書き写します。
『子育てー教育の基本は、心身全体による愛です。文字通りの触れ合い、だっこしたり、おんぶしたり、ほほ擦りしたり、ふざけ合ったりすること。また、心のこもった視線や感情の豊かな抑揚のあることばで接すること。一言で言えば、心身全体による愛です。理屈以前の身体的な触れ合いこそが核心です。断言します。それがなければ、まともな人間には決して育ちません。
 愛とは、心身全体によるもの。子どもが自分を心底「肯定」できるのは、全身で愛されているという実感のみです。子どもを「言葉」だけで教育できると思っている人は、全くの能天気です。子どもが著しい適応障害を起こすのは、「理性」の不足からではなく、「愛」の不足からなのです。
自分を自分で肯定でき・受け入れ・愛することができなければ、他者を肯定し・受け入れ・愛することは、不可能です。他者を肯定できなければ、中身のある人間付き合い=真の人間関係は決して生じません。人間関係とは、言葉で教育できるものではありません。愛や思いやりや優しさは、具体的に態度で示すことができるだけです。「教え込む」ことが不可能な領域です。
 大人である私たちが、形だけで他者と関わる外面人間であっては、よい子は育ちません。本気、本音で他者と関わる勇気が必要です。愛の心があれば、「ぶつかり合い」は生産的になります。しかし、「勝ち負け」の意識が支配する愛のない不幸な心は、すべてを壊してしまいます。
 「心身全体による愛」は、人間の様々な営みを「よい」ものにするための絶対の条件なのです。言葉―理屈ではなく、実践です。そのように生きること、態度で示すこと、それ以外に方法がありません。心身全体で愛し生きることのできる人間を育てなければ、私たちの社会は砂漠化して生きる意味が消えてしまいます。』

固い概念によって生身の人間を縛る思想をわたしは「言語中心主義」と呼んでいますが、これは人間の幸福を元から奪う癌細胞のようなものです。それを越えていくには、【運動・感覚次元】と【想像力の次元】を開発することに意識的に取り組むことが大切で、その基盤を広げ強めることが【言語による思索と交流】を価値あるものとする鍵であり、前提だ、それがわたしの不動の確信です。

武田康弘




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