思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

民主主義の原理を知らない松下政経塾出身者

2011-08-24 | 社会思想

前原さんにせよ、野田さんにせよ、旧自民党とどこが違うのでしょうか?

官僚に抗えない実力のなさ、
脆弱な現状維持思想、
主権在民を原理とする民主主義に対する甘い理解。

松下政経塾出身者の「エリート」意識は、主権者を市民とする民主主義とは異質なものです。


「民主主義とは何か」を知る最高の教材は、ルソーの『社会契約論』ですが、レトリックを多用した文学的な哲学書であるこの本の真意を読み取るのは難しく、現代の大学教授(受験知の延長でしかない頭脳の持ち主)も荒唐無稽な読み方をする人が多いのです。『社会契約論』の意味は、ルソーの教育論・人間論・文化論である主著の『エミール』と共に読まないと明瞭になりませんので、一般の政治家がこれを勉強するのは難しいでしょう。

そこでわたしが勧めるは、哲学徒であり経済紙(『東洋経済』)の主幹であり、戦後は総理大臣を務めた石橋湛山の著作です。岩波文庫の『石橋湛山評論集』(石橋湛山著)を岩波ブックレットの『石橋湛山の小国主義』(井出孫六著)と共に熟読することが大切です。民主主義を理解する上に不可欠な努力だと言えましょう。

話がそれますが、
政治家ではなく官僚たちも、これらの著作をきちんと読んでいる人は、ほとんどいません。「受験勉強的な知」しか知らない人たちは、理論書の読解を自らの経験とする主体的な読書ができないのです。彼らは、事実の暗記や物事のパターン的理解に留まり(=「事実学」的な情報知の収集)、意味をつかむ(=「意味論」の探求)が不得手なために、現状維持に明け暮れるばかりです。

話を戻しますが、
民主主義の意味と価値を了解する上で大きな助けになるのが、ホイットマンの詩です。
生涯かけて改定を続けた『草の葉』は、アメリカの良心とも言われますが、民主制社会に生きる人類の良心です。内的であることが民主的、民主的であることが内的であることの宣言のような詩で、平明でパワフル、人間の内から湧きあがる声は、民主的倫理の文学的=詩的表現の極地です。

人間存在の対等性と自由を相互に承認し合うことでつくられるルール社会(=開かれた社会)である民主主義の価値を深く知れば、官僚が治める「官治主義」ではいけないことが分明になります。主権者は国民であり、国会議員は「一般意思」の代行者であり、官僚は国民サービスマンなのですから。


武田康弘
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