清瀬保二(きよせやすじ)のピアノ作品を聴きながら、感じることを。
明晰(めいせき)な論理に支えられた抒情性。
土着的にして洗練の極み。
凛(りん)とした倫理性をもつ。
平易で透明、かつ豊か。
楽しく、かつ品位が高い。
不屈・強靭(きょうじん)で、かつ深く優しい。
リズミカル・舞踏的で、かつ思索的。
孤高にして民主的。
清瀬のピアノ音楽作品で多いのは「こどものための」と銘打たれた曲。
バルトークも40の小品集「こどもために」をつくっているが、清瀬作品は子ども用の練習曲ではなく、詩情に富み、はるかに多彩。
深い悲しみや憤りは、昇華され、心の襞(ひだ)を震わす美へと変貌している。偉大な芸術のみがもつ力だ。
それにしても、なんと繊細で深々とした音楽であることか。
天才的な響きと音色に、唖然となる。
日本が生んだ最高の作曲家・清瀬保二は、なぜか知られず埋もれている。
ぜひ、3年前にはじめて出た全集(清瀬保二ピアノ独奏曲全集・ピアノ花岡千春)をお聴きください。
武田康弘