★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

漱石と妻のドラマがやってた

2016-09-24 23:49:09 | 文学


最後のあたりだけ見たが――、蚊帳の中の夫婦に猫の声が聞こえてきて、漱石が「小説家になりたい」と言ったのがわざとらしくてよかった。夫婦の絆的なあれはいいから、はやく、下の場面を見たい。

「貴夫が私のものでなくっても、この子は私の物よ」
 彼女の態度からこうした精神が明らかに読まれた。
 その赤ん坊はまだ眼鼻立さえ判明していなかった。頭には何時まで待っても殆んど毛らしい毛が生えて来なかった。公平な眼から見ると、どうしても一個の怪物であった。
「変な子が出来たものだなあ」
「どこの子だって生れたては皆なこの通りです」
「まさかそうでもなかろう。もう少しは整ったのも生れるはずだ」
「今に御覧なさい」

――「道草」